教育活動の歩み〜教育課程の変遷

現在の教育課程
 現在の教育課程は資料Tで、その特色は次の五点である。
 第一に高等学校の学習の基礎となる英語・数学・国語を増単して基礎・基本の徹底化を図っている。1・2年生で標準単位数と比較して国語を2、数学を2、英語を3単位増やしている。
 第二に生徒が進路目標に対して具体的かつ早期に取り組むように2学年から文理の類型を設けている。数学については文理同科目同単位であるが、教科書を変えて難易度で配慮している。
 第三に理科・社会については受験科目の選択の失敗がないように配慮している。理科は1年の理科Tで物化生地の四領域を学習させ、その中から2・3年の受験科目を選択、社会も文系において2年で世界史必修、日本史か地理から1科目を学習させ、3年では得意科目を1科目継続履修する形となっている。なお世界史必修は新学習指導要領への移行措置である。
 第四に受験科目となる5教科について大幅な増単をしている。これは時間をかけて学習させることにより、生徒の力を最大限伸ばしかつ落ちこぼれを減らす配慮である。
 第五に、3学年で1〜2科目の演習科目を設定し、得意科目を伸ばし、苦手科目を克服させていきたいという配慮からである。


創立時の教育課程
 このような現行の教育課程は過去20年にわたる実践と反省、入学している生徒層の変化への対応、社会の発展に対する適応の必要から生み出されたものである。創立時の教育課程は資料Uにあるように昭和47年にスタートした。48年から毎年度改正が重ねられて50年度に一応の完成をみた。50年度の教育課程が57年度の新指導要領による改正までの基本となった。
 この教育課程は全人教育をめざし、全教科科目が比較的バランスよく配列されている。
 大きな特色としては50年度から実施(教育課程表では49年度入学生から)された選択ゼミである。これは自主性、創造性を育成することに主眼をおいて設置したものであるが、54年度には廃止された。講師時間数削減のために講座数を確保するのが困難であったり、共通一次試験など大学受験の変化にともなって本来的性格が失われ易くなったことが主たる理由であった。
 50年度からは教科科目も合計単位数が1・2年生31単位、3年生30単位となったが、これは面接相談や個人指導、生徒会活動や部活動などの時間を確保するためであり、特に3年生の30単位は、受験対策上、自主的に有効利用できる時間帯として、平成3年度入学生で改正されるまで伝統的に継続された。


54年度の教育課程
 54年度入学生から3年生の類型を3類型に改正した(資料V)。十周年記念誌の中に次のように記されている。
 A1は私大などに適し、従来のAよりも数学や理科の負担を軽くしたり、芸術を必修にしたり、また被服を理科と選択させて幅広い教育ができるように配慮した。
 A2は従来のAよりも数学2増の5単位として数Tの円周も含めて共通一次試験に対して配慮した。また日本史1増の4単位にして3年生の授業時数不足を補えるようにした。
 Bは数学2増の7単位として、数Vの他に数T、数Uの演習も可能にした。また日本史で受験する生徒が多いので増単して配慮するとともに、世界史を廃して社会の合計時数を減らして生徒の負担を軽くした。英語も1増の6単位にして充実し、理科は理U2科目6単位を8単位にして充実し、学力の向上を図った。その反面、理Uの展開が複雑になり、時間割を硬直化させ、自然学級編成に一層の努力を要することになった。以上の増単をゼミとの関連でみると、ゼミを廃止して、各教科の特徴を出すために教科科目に増単したと解釈することもできる。


57年度からの新教育課程
 昭和53年8月に告示された学習指導要領に基づいて54年12月に新教育課程委員会が設置され、56年3月に決定されたのが資料Vにある新教育課程である。
 ここでは可能性を最大限に伸ばす教育を基本方針として、生徒自身が自らの能力を開発していこうとする教育(自主的)、日常の計画的な学習習慣を育てる教育(計画的)、生き生きとした学校生活をおくる(意欲的)の三点に基づいた教育課程が編成された。詳細については昭和55年度版「実践と研究」を参照してほしい。
 この教育課程には今後において解決すべき問題が三点あった。
 第一に2年履修の日本史、地理が標準単位数に対して1減で受験科目としては不利であること。
 第二に理科Tを1・2年で8単位履修のため理系の生徒は3年で2科目選択して受験に臨むには大きな負担であること。
 第三に3年文系の選択が複雑過ぎて、学級編成、時間割作成、使用教室などの面で問題であること、であった。
 この問題点に対する改正が59年度、60年度教育課程である。しかしながら共通一次試験科目数と配点の変更と生徒の質的変化に対応する必要から再び大改正に踏み切った結果が、昭和61年度教育課程である(資料W)。


61年度からの教育課程
 この教育課程編成の具体的方針は次の四点である。
 第一に、英数国については三年間を通した学力向上のための科目履修構造を考え、特に英数の1年でそれぞれ1増を図る。
 第二に理社については受験で使う科目をすべて増単して受験に対応できる学力をつける。また、選択の理社を2科目履修させるときは、1科目は2年で完結させて3年に履修を集中させない配慮をする。
 第三は、類型を2年から設定し、低学年から具体的な進路目標をもって計画的に学習させる。また週当たり時数を1・2年32、3年30として従来の本校の方針を生かす。
 第四に選択群の簡素化を図る。特に3年私立文系の選択をA群日本史、政経、倫理、B群確率、英U、C群芸術、食物の3グループにして選択させる方式に整理する。
 この教育課程は3年私立文系において2グループへとさらに簡素化されていった。
 ところが猫の目のように変わる大学入試は、共通一次試験から共通テストへ、これに伴う大学入試の選択方法は大きく変貌し、教育課程もその対応に追われることになった。国公立大の入試も私立型へ多様化している中で、これに対応する教育課程が検討され、平成3年度入学生から実施に踏み切った現在の教育課程がそれである。教育課程は、学校教育の目的を達成するための総合的な教育計画であり、教育の諸活動が実践される土台になるものである。進学校である限り対応せざるを得ないが、大学入試制度の変遷に伴って教育課程そのものが変遷してきた感が強い。ここにも日本の教育の問題の縮図をみる思いでいっぱいである。なお61年度教育課程については、昭和61年度版「実践と研究」に詳細に記されている。