第2編・各論〜第2章 校舎

設計の理念
 前章の教育目標を踏まえて
(1)生徒との人間的なふれ合いの徹底
(2)能力、適性の多角的な把握と個別指導の徹底
(3)自主的、能動的な生活習慣の育成
(4)各種教育機器の活用による効率的な個別学習法の開発
(5)文化的な活動の充実による豊かな感受性の涵養
(6)体育的な活動の充実による体力、気力の養成
(7)規律ある集団活動と連帯感の高揚
の7項の重点活動を考え、それに対応する施設として、スタディルーム、食堂(ロビー兼用)、教育工学教室、図書室(視聴覚教室と有機的なつながりを持ったもの)、二層構造の体育館、数学教室を構想の中に取り入れるよう考えた。さらに、学年集団を重視した大教員室制を採用したので、その短を補う教員研修の場として、教員研究室を考えた。

スタディルーム構想
 これには二つの面がある。一つは自学自習の場を提供することである。将来さらに選択制が進められた場合、時間割の都合で空き時間が出てくることが予想される。それに対応して小集団あるいは個人で自習できる場をできるだけ多く確保しておこうというものである。もう一つの面は、現行の学級定員の半分程度の基礎集団を考え、それに学校生活の本拠を提供することである。その集団と教員一人とを対応させて3年間の生活単位と考え、教員全員が生徒との直接的な生活集団関係を持とうというのである。この構想は、校舎総面積の制限や教員定数の関係で実現することはできなかったが、準備室を広めにつくることや演習室を設けることの中に生かされている。したがって、準備室および演習室は小集団の指導あるいは準備のためのものであって、教科教員室とは趣を異にしたものである。

メディアセンター構想
 放送室、視聴覚室、教育工学室、図書室などの視聴覚関係施設を集中的に配備することによって、その効率的な活用や相乗効果をねらったものである。資料を共用することによって重複を防ぐとともに、映像、音声、図書を必要に応じ随時取り出して利用することができるようになっている。将来はテレビシステムの導入によって、学校放送や自主製作番組を活用した同時展開授業や共通の部分を機器にゆだねて“ひとりひとり”のつまずきに対する援助を教師が受け持つような方式なども考えられている。しかし当面は、視聴覚室と図書室、さらに第一・第二講義室、51年度に教育工学室が整備されればそれを含めて、学習の個別化、プログラム化、映像化による効率向上を目指した実践と研究が続けられていくことになる。

ホール
 単なる食堂ではなく、生徒と先生とのインフォーマルな接触の場として考えられている。授業を離れた気楽な談話を通じて心理的な結びつきを深めることが教育効果を一層高めることになると考えたのである。学校が“修業の場”よりも“生活の場”であるという現実の変化に対応したものであるといえる。

環境整備
 基本的には学校を緑の多い環境の中に置こうということである。直接的な教育効果は期待できないにしても、美的情操を育て心理的なやすらぎを与えるなど、前述のホールと同様のねらいを持ったものである。