北陵だより第1号/昭和47年7月22日発行

*創刊号はなつかしいガリ版刷りです。


[北陵だより第1号 1ページ]

「北陵だより」の創刊にあたって
PTA会長

 最近、PTA活動のあり方についていろいろと論議されておりますが、要約しますと学校後援的な事業一本槍という性格から脱皮して、子どもの幸福な成長をはかるための会員相互の学習活動や社会活動に重点を置くべきだとする考え方に向かっているようです。
 本会の場合、誕生したばかりの、しかも会員のほとんどが高校のPTAは初めてということで、会の運営についても暗中模索の状況ですが、それなりに因習に捉われることなくPTA本来の活動を展開していくことができるのではないかとも考えている次第です。
 すでに6月10日には授業参観を織り込んだ父母懇談会が行われ、引き続いて担任の先生との個人懇談が約1ヵ月にわたり実施されました。これらの行事を通して先生と父母との意志の疎通がはかられたわけですが、このようなことは他校にはみられないユニークな活動ではないかと自負しております。
 しかしながら、父母会員相互の交流という点についてはまだ何一つ手がうたれておりません。会員の分布が広域なこと、それぞれ多忙な身であることなどの理由から簡単に会合を持つわけにはいきませんので、今回発刊される「北陵だより」を会員相互の意見交換の場にしてはどうかと提案申しあげる次第です。
 たまたま今回は準備の都合で、会の歩みや学校の近況など、一方的にお知らせする記事ばかりという紙面構成になってしまいましたが、次回からは大勢の会員からの投稿を期待しております。編集や印刷も先生方をわずらわせましたが、第2号からは活版刷りとし、できれば編集に父母会員も加わっていただきたいものと念願しております。
 いよいよ酷暑の候です。みなさまのご健勝をお祈りして創刊のことばといたします。

1学期を終えるにあたって
校長

 開校以来、またたく間に1学期の終業式を迎える頃になってしまいました。最初に申しあげましたように、早い時期に広報活動をと考えておりましたが、新校舎の建築構想の立案、父母懇談会の準備や実施など、当初にしなければならないことが重なり、人手の不足なこともあっておそくなってしまいました。
 さて、この3か月近くの間、生徒と接触して感じますことは、当初のとまどいが馴れてくるについて、すなおな生徒が多いこと、真摯に第1回生として学校づくりに取り組んでいること、したがって明るい、楽しい雰囲気ができつつあることなどであります。先生方もよく個々の生徒に接触し、個性の理解を深めながら、時間を超越して指導に当たっていることと、父母懇談会でザックバランなお話し合いができ、いっそう家庭・担任・生徒が身近かになったことなどが、この状況を生んでいるものと思います。ただ、心配なのは、大方の生徒が勉強の方法を知らず、きびしい学習の経験を持っていないこと、自分のよさを自覚せず、何事にも自信をもてないでいること、自分で方針をたて努力する意欲が十分でないことなどであります。
 そこでこれからは、すべてを自分達で作っていく創設の事業を遂行する中で、人間を鍛えることは勿論ですが、教科指導や生活のあらゆる機会をとらえて、生徒との接触を一層深めながら、根気づよく学習の習慣方法を身につけさせ、学習の習慣化をはかり、その中で誇りと自信を持てるようにしてやりたいと思います。また、暇をみつけて、いろいろなこと、運動、趣味(遊び〜学習以外のこと)などをさせ、その中で体力、気力、意欲を養うとともに、潜在している能力、個性(特性)を自覚させたいと思います。
 一般的に学力を中心に人を評価しがちですが、改めなければならないことの一つです。勉強ができるか、できないかだけに気をとられてその他のかけがえのないよい面が見失われ、気のついた時には、元も子もなくなっていることがあります。ご家庭におかれては、人間としてどんなよい点があるかを中心にお子様を見直し、その点を大いに称揚し、信頼してやってください。そのことは、学校の指導とあいまって必ず学力の向上をもたらすものと信じて疑いません。
 そして、今でも「教師は生徒の鏡である」ことを自覚しながら、きびしく、愛情のある指導に徹するよう努力していきたいものと考えております。

役員一覧
 (この項目は掲載いたしません。)


[北陵だより第1号 2ページ]

開校・入学式式辞
校長

 春うららかな本日、唯今をもって諸君は札幌北陵高校第1回の入学生となりました。まことにおめでとうございます。
 本年は、道民・国民の宿願でありました、冬季オリンピック札幌大会が開催された年であり、また、学制発令100年の記念すべき年であります。(また、札幌市が政令指定都市になった歴史的に意義深い年でもあります。)この年に本校が予定より1年早く開校できましたのは、教育委員長殿の式辞にありましたように、市民の熱烈な要請と道当局の勇断、札幌市の絶大なご協力によるもので、諸君ともども深く感謝の意を表するものであります。
 また、一条中学校を仮校舎として開校されたことも意義深いことであります。といいますのは、一条中学校は戦後新制中学校の創設と同時に、そのモデル校として発足し、新教育のメッカとして、多くの道内教職員がここに集まり、研究したのでありまして(私もその一人であります)、中学校教育の普及定着に大きな貢献をしたのであります。今や世界をあげての教育改革運動のさ中に、新しい社会の実現に果たす教育の役割を求め、新しい社会に生きる人間の育成をめざして、わが札幌北陵高校がこの校舎を仮校舎として発足することになったのは、まことに意義のあることと存ずるのであります。それだけに市民道民の寄せる期待も大きく、私共教職員も責任の重さを痛感しているところであります。
 さて、若さと希望にあふれた180名の諸君を前にして、うれしく思いますことは、どの顔をみても「創業の苦労を耐えぬくぞ」という決意にあふれていることであります。今後何十年、何百年と続くこの学校の土台をこれから作ることになります。180人の生徒と17人の教職員ががっちりスクラムを組んで、共に汗を流しながらこの苦労の多い仕事にぶつかりたいと思います。そうすれば必ず楽しい学校のできることを確信しております。苦労の多いことは、楽しみの増すことであります。それを耐えぬいてこそ、21世紀に生きるたくましい体力と充実した気力、旺盛な意欲が生まれると信じております。体力、気力、意欲のないものは、これから変動してやまない社会の落伍者になるでしょう。
 諸君は、これから人生の疾風怒涛時代といわれる青春期を迎えます。一度は通らねばならない人生の関門であります。これを通り抜けるためにも体力、気力、意欲がなければなりません。ひとりではなく、みんなで手を取り合って立ち向かいましょう。そこにまた、人生のえい智も得られると思います。

 高校は、中学校とちがい発達段階からいってもすべて自分で考えてするようにせねばなりません。ひとり立ちする年頃なのです。与えられるものを待っていては、いつまでもひとり立ちできません。勉強も自分から進んでやらねばなりません。孔子がかいた論語の中に「憤せざれば啓せず」というのがあります。憤とは「憤発―自ら発する」、「啓せず」とは「教えない」ということです。すなわち、自分で勉強しようという気のない者には、いくら教えても無駄だから教えないという意味です。自ら疑問を持ち、門を叩くならば、先生方はどんな稚拙なことであってもよろこんで解決に手を差しのべるでしょう。「憤せざれば啓せず、憤せざれば啓せず」。この機会に胸にきざんでおいてください。3年は長いようでまことに短いもの。悔いのない3年間になりますようお互いに努力しましょう。

 次に、保護者の皆さまに申しあげます。私どもは、生徒がひとり残らずよろこんで登校し学ぶ学校を作りたいと念願しています。これが私の理想の学校であります。疾風怒涛の青春時代は、ご両親のまごつくことの多い時でもあります。どうぞ何事によらず早目にご相談いただきたいと存じます。私どもはできるだけ具体的に学校の動き、ご子弟の動向について情報を流したいと考えています。学校と家庭との協力、理解がなければ十分な成果が得られないからであります。新設校なるが故にご協力いただくことも多いと存じますが、よろしくお願い申し上げます。私達教職員は、この第1回生に教師の生命をかけております。これからの3年間、一千余日を千日悲願のつもりで努力したいと思っています。よろしくお願いいたします。

 最後になりましたが、北海道知事代理殿をはじめ来賓の方々にはご多忙のところわざわざご臨席くださいましてまことにありがとうございました。おかげで本日の開校入学式を輝かしい、印象深いものにさせていただきました。厚くお礼を申し上げます。
 以上をもって私の式辞といたします。
(昭和47年4月10日)

学校のあゆみ
入学式
 札幌市民の強い希望と知事、道教委の英断によって新設された本校の開校式並びに第1回入学式は、昭和47年4月10日午後1時から仮校舎である旧一条中学校の体育館において、多数の来賓、父母臨席のもとに挙行された。
 佐山教育委員長は、式辞の中で開校に至るまでの経緯を述べた後、180名の新入生に対し「3年間に少なくとも1人のよき友、1人のよき師あるいは1冊のよき書物にめぐりあい、それを生涯の宝として大切にしてほしい」こと、「光栄ある本校の歴史の第1頁を書くという責任の重大さを自覚してほしい」と激励した。次いで村上教育長から本間校長に校旗の授与があり、校長式辞(全文別掲)、知事、札幌市長、高等学校長代表、市民代表の祝辞、最後に新入生代表の力強い宣誓があって、厳粛な中にも喜びと希望に満ちた開校式入学式はとどこおりなく終了した。

宿泊研修
 入学後最初の学校行事である宿泊研修が、4月22日から2泊3日の日程で国立大雪青年の家で行われた。
 午前8時30分、学校前から4台のバスに分乗した生徒184名(病気で2名不参加)と、校長以下全教職員それに熊沢事務長を加えた一行は、残雪輝く十勝岳の麓を目ざして出発。
 青年の家では、初めての集団生活に戸惑いながらも、活発な討論、楽しいレクリエーションなどを通じて、高校生としての自覚を深め互いの友情を確かめ合う中で、全人が一致団結して新しい学校づくりに取り組むことを誓い合った。
 2日目の夜のすばらしいキャンドルサービス、3日目の吉田所長の肝銘深い講話など、数々の思い出を土産に24日午後5時全員元気で帰校した。

生徒指導連絡協議会
 5月18日午前10時25分から、市内北6条東3丁目札幌卸売センター共同会館で、石狩・後志地区生徒指導連絡協議会が開かれ、本校からは校長、生徒指導部長、父母から3氏が参加した。
 午前中は、石狩教育局長、教育庁学校教育課長によるオリエンテーションに続き、道教育長の講話があった。講話の中で強調されていたことは、子供は未来に対し不安感をもっていて、身近かな人生の師として両親をみている。子供は父に意志と頑張りを学び、母には暖かさを期待している。家庭内での対話を充分にしてほしいということであった。
 午後は2つの分科会にわかれ、非行問題、反社会行動についての研究協議・討論が行われた。この分科会での話題の中心は、非行、反社会行動をとわず根は同一であり、学校と家庭とが密接な連係をもち、車の両輪のごとく協力して子供を育てるべきであるということであった。午後4時30分閉会。


[北陵だより第1号 3ページ]

遠足
 当初の計画では校舎建築予定理である屯田地区を経て、茨戸公園に行く予定であったが、敷地が本決まりになっていないことから、目的地を急遽変更し、野幌原始林および開拓記念館見学とした。
 朝8時50分札幌駅を出発。野幌駅に到着した頃は前日迄の好天気がくずれ、ぽつりぽつりと雨が降り出し、原始林を歩き百年記念塔へ到着したときは本降りとなってしまった。そこで開拓記念館の講堂を借りて昼食をとり、その後“石狩平野の成立について”という題の講話、さらに館内見学をして3時半現地解散。

父母懇談会
 6月10日(土)1・2時間目は授業参観、11時より約50名の父母が出席して、第1音楽室で全体懇談会が行われた。本間校長より入学式後2ヵ月間の学校の歩みや生徒の活動状態を説明、更に家庭への要望等を話された後、教務部長から「高校生活のアンケート」、「教務内規」の説明があり、続いて指導部長から「放課後のクラブ活動」と「制服についての生徒の意識」について説明があった。
 午後は学級毎にわかれて懇談。各級20名前後の父母が出席して熱心に行われた。懇談会での中心は、
(1)高校生は何時間位勉強したらよいのだろうか。
(2)子供はノンビリしてあまり勉強しない。勉強させるのはどうしたらよいだろうか。
(3)生徒は北陵高校に入学して満足している。またよく運動し、よく遊んでいる、ということなどであった。
(「すごく勉強しているので、身体をこわさないかと心配している」とか「勉強のため寝る時間が少なくて心配している」などという話は1つも出なかった。)

中学校との懇談会
 6月14日本校生の中学校時代の旧担任および校長先生を招いて、高校としては珍しい懇談会が行われた。出席されたのは市内27校の先生方であった。
 校長より本校の教育方針を話された後、学年主任、教務部長、指導部長の順で「本校生の学校生活のアンケート」「本校生の実態」「学力検査、実力テスト、定期テストの集計」等の説明・質疑応答が行われた後、中学校毎に生徒一人一人について中学時代の生活、高校入学後の生活について話しあいが行われた。
 中学校側は(1)本校入学のための合格圏、(2)北陵高校はよく生徒の面倒をみているという点に注目していたようであった。

球技大会
 第2回定期試験終了後の7月13日(木)から3日間の予定で級対抗球技大会(卓球、篭球)がそれぞれ4クラスのリーグ戦で行われ、体育館は大歓声と熱気につつまれた。熱戦の後、卓球は1位3組、2位2組、3位4組であった。篭球は女子の対戦の後、男子が対戦し、得点を加算して級の得点とするルールで行われたためか、激戦が続き2勝1敗のクラスが3つとなり、予定の3日間では順位が決定せず翌週にもちこされ、結局1位4組、2位3組、3位2組となって19日終了した。それぞれの種目の1位には校長杯、教頭杯が終業式のとき授与された。

臨海学校
 夏休み早々学校行事として古宇郡神恵内村青少年旅行村を利用して臨海学校が開かれる。男子75名女子58名計133名の参加希望者があり、7月23日から2泊3日の期間、水泳・磯あそび・釣り・レクリエーション・キャンプファイヤーなどを通じて青春を謳歌し、さらに友情を深め、楽しい思い出を作ろうとしている。

雑感
 息子が本校にお世話になって、はや5か月になろうとしています。息子が受験日3か月位前に本校への進学希望を自分から決定し、私に話してくれた時は一寸とまどいました。それと申しますのも、もう30数年前になりますが公立中学の入試に失敗し、やむなく創立まもないカトリック系の私立中学に入り、さんざん苦労したことを想いだしたからでした。その苦労とは、多数ありましたが、第一は上級学校の受験の目標がつかめなかったことです。創立後の年数もある程度経過しますと、自分の実力と過去のデータで、ある程度予知できますが、これが全くつかめず苦労したことでした。第二は、教育施設や体育施設が全く不備で、現在の本校と全く同じ状態で、当時はPTAや後援会のような組織もなく、生徒自らの手でグランドその他の造作をしたものでした。第三は私立と云うこともあり、現在でいう先生と生徒の断絶とでも申しますか、教育史上日本で最初と思いますが、2か月の長期ストがあったこと等です。卒業して年数を経過し、母校もその後幾多の人材を世に出し、発展の現在、創立のくるしさも今は楽しい思い出になっておりますが、創立の苦しみを息子に味わせたくないと思うのは親の常で、本校の創立説明会には家内を出席させたものでした。
 幸い入学を許され本校に接触の機会を得、校長先生始め諸先生方の教育への情熱および関係機関の力の入れよう等を感じ、安心と同時に己れの進路を自分で決定し、自分なりに努力している息子をたのもしく眺めている今日この頃です。幸い他校なみにPTA、後援会等も設立発足いたしておりますが、伝統のない学校造りは色々の苦労がともなうもので、学校側も生徒も懸命な努力が必要と存じます。ゆえに、父兄も今一度初心にかえり(子供さんの合格の時点に立って)、積極的に協力の必要があると思います。三者が一体となり努力することにより、良き本校の伝統もでき子供達の苦労も楽しみあるものとなるものと存じます。

これからの主な予定
7月22日(土) 球技大会の表彰式、終業式
23日(日)〜25日(火) 臨海学校(神恵内青少年旅行村)
24日〜8月19日(27日間) 夏季休業
29日(土) 図書開館日(10時〜2時)
8月10日(木) 図書開館日(10時〜2時)
21日(月) 第2学期始業式、実力テスト(国英数)(昼食持参のこと)
9月上旬 体育大会
10月4日(水)〜6日(金) 中間考査
9日(月) 遠足
下旬 父母参観日

編集をおえて
 中庭の片隅にユリノキという樹がある。芽生えから若葉の時期になっても樹の名がわからず、花が咲いてはじめて、もくれん科のユリノキであることが判明した。北米原産の街路樹である。生徒が大通りにも一本あると伝えてきた。生徒にとっても気になる樹らしい。

 天井の鳩には開校以来いろいろ悩まされたが、生徒が餌を与えるようになってから親しみも増し、今では手のひらにとまって餌をついばむようになっている。ハトの公害もあるがこのまま共存していきたいものである。

 「北陵だより」の第1号が発刊できた。なにごとでも創造していく過程は苦しいが、仕事を終えたあとの充実感には忘れられない味がある。この機関紙が永く続くように育てたいものである。