北陵だより第4号/昭和48年5月1日発行


[北陵だより第4号 1ページ]

新しい学校の創造をめざして
校長

 一年をふりかえって、あっという間に過ぎてしまったというのが実感である。
 180人の生徒を迎え、17人の教職員でどうすれば生徒の希望にこたえ、父母の期待にそう学校運営ができるのか、10余年の現場のブランクを克服できて、生徒・教職員・父母の満足のいく運営になるのか、これが一年中頭の中にこびりついてはなれなかったことである。結論的にいうならば、1年たって学校運営の原型は、北陵高校の方式は輪郭としてできるるあるように思えるのだが、それは先生方や事務職員の超人的な働きによってなされたものだという感が強い。
 4月早々の全員による宿泊研修、5月から11月まで続いた新校舎の構想設計づくり、7月末の全員による臨海学校、その間生徒の基本的生活態度のしつけの徹底、ひとりひとりの生徒の理解のために全員に対する個人面接の実施、家庭との連携強化ということでの担任の全父母に対する2回の面接と地区懇談会の実施、体力、気力、意欲を作るための全員加入をめざしての放課後の体育クラブの指導、そして年間通しての授業の確保とわかる授業の徹底、望ましい生徒会づくりのための準備委員会の指導と生徒心得の分析調査、さらに研究会員としての研修―生物・地学、視聴覚、北数教、英語研の研究授業、教育相談―。さらに高校教育課程研究協議会の指導担当(国語、総則)と参加(数学、英語、理科)、生徒指導研究会、道研講座への参加(英語・教育相談)等々。このひとつひとつが、新設校の基礎づくりに役立つとはいえようが、既設校でもこれだけ重複しては実施されていないであろう。10人の先生方でこなしてきたのである。チームワークもできた、生徒はよろこんで登校してくる、行儀がよい、清掃が行き届いている、1年生ながら対外試合にも出場し、真剣にがんばっている等の賛辞も受けているが、一方、学力伸長が鈍いという不満が教員の中に強い。そして後半倒れる教員が出た。果たしてこれが常態としてよいのだろうか、と思う。
 教育は雰囲気が大事である。2年目を迎え、生徒数540人、教職員37人にふくれた。1年目の雰囲気を失わないで、生徒も教職員も元気溌溂として、喜々とした中で生徒の体力と学力の伸長を期すためには、一にかかってバランスのとれた学校運営にかかっている、としみじみ思うのである。

1年を回顧して
PTA副会長

 親子ともども希望と期待に胸をふくらませて入学しましてから、早くも1年になりました。
 入学と同時にPTAが誕生したわけですが、先輩がいない為、盲目同様、心細い気持で一杯でございました。幸い校長先生はじめ諸先生の積極的なご協力、ご支援を得まして、不十分ながらどうにか1年過ごさせていただきました。特に新校舎建設につきましては、PTA会員皆様の大きな力が実りまして、明るい希望をもって新年度を迎えることが出来ました。PTAの存在価値というものをあらためて力強く感じましたのは、私一人ではなかったと思います。
 PTAの在り方につきまして、新聞、ニュースなどでいろいろ批判の声が聞かれる最近ですが、自主性を持たないPTA活動ということから批判があるのでは?と思ってみたこともございます。この1年間、PTAは必要であるという前提に立って皆様が努力いたしてきたものと信じております。
 やっとハイハイから一人立ちしつつあるPTAも、新年度に迎えた新会員と共に、今度は一歩一歩力強く歩み、新鮮で明るいPTAに成長されますことを心から念じております。

生徒会設立のあゆみ


 はるかなる理想をめざし、1年間、生徒会づくりに努力してまいりました。
 その歩みの一歩一歩に人生の真実があることを生徒自ら知り、人間として「働く喜び」「考える喜び」「つくる喜び」「美しくする喜び」を学び、将来良き開拓者として北陵高校を巣立ってほしいと願いつつ、生徒会設立への指導にあたってまいりました。
 1年間をふりかえってみると、4月〜5月は宿泊研修を出発点として「生徒会は必要か」を中心に全員が生徒会が必要である、という認識を持つまで、ホームルーム、全校集会を通して討論を深めてきました。
 6月〜7月は、それでは生徒会をつくるにはどうしたらよいか?から、生徒会設立準備委員会をつくることになり、各クラス希望者を中心に4名程度で組織する。そして、生徒会設立準備委員会の仕事内容について審議、仕事内容として
・生徒会の組織、規約の作成
・準備資金の検討
・新役員誕生のための選挙管理委員会の仕事
この3つに力点をおきました。
 8月〜9月は資料の収集より始め、他校へのアンケート、生徒手帖などの収集に勢力をそそぎ、一方では準備資金の原案作成、ホームルーム討議を重ねる。
 10月〜11月は、他校、本校のアンケート集約・分析、今までの生徒会の問題点について整理。
 12月〜1月は、本校生徒会のあり方を検討、その上にたって本校生徒会の組織の作成、決定。
 2月〜3月は規約の骨子の作成、そして新役員の誕生となったわけであります。準備委員長を中心とする17名の委員は1年間よく努力し、創造性の豊かな仕事をしてくれたことに感謝するとともに、この1年間を通して彼等の中に少しでも人間的に成長し、これからの人生にプラスになれば幸いです。


[北陵だより第4号 2・3ページ]

父母大いに語る
座談会「北陵一年」



司会
 きょうはお忙しいところをありがとうございました。これから1年間をふりかえって、PTA活動、生徒の動き、そして家庭から学校へ、また学校から家庭へなど、いろいろな角度から自由にお話し合いをしていただきたいと思います。まず、PTA活動から・・・。
保護者
 高校のPTAは初めてなので、成果があったのかどうか判断しにくいのですが。
校長
 PTA活動というのは、小中高を通じて本質的には同じと考えてさしつかえないと思いますので、中学校のPTA活動を比較されていいのではないでしょうか。
保護者
 高校に来たら本当に楽ですね。中学校時代でしたが家にいるよりも学校に行っている時間の方が多いくらいでした。
司会
 具体的に、どんな用事が多かったのでしょうか。
保護者
 研修会などが盛んでその準備や後かたづけなどで忙しうございました。
保護者
 高より中、中より小と子どもが小さいほどPTA活動は活発になっていると思います。それに組織の問題もあります。小中では専門部制をとっているので、役に就くと始終学校へ行くようになりますね。高校は地域も広いし、小中と同じわけにはいかないと思いますが、何か高校PTA独自のあり方が必要だと思います。今すぐには思いつきませんが。
司会
 小中学校では、役員以外の父母の方々の学校への出入りはどうですか。
保護者
 うちの子がいっていた中学校では伝統的に父母が多数学校に来ていましたし、横のつながりが必要でしたのでよく集まりました。

個人懇談
司会
 高校でも横のつながりが大切なのです。そのために学級懇談会を6月に実施したわけです。
保護者
 よその学校のお母さんの話ですと、高校に入ったら学校へ行くことなどなんにもないですよといわれましたが。
校長
 そうではなくて、学校へは気軽においていただきたいものです。この1年間に個人懇談でだいたい2回くらいは来ていただいているはずですが。
保護者
 私は家庭の都合で個人懇談に行けなかったのですが、後日先生にわざわざ家庭訪問をしていただいて、北陵高校は熱心な学校だなあと感心させられました。
保護者
 上の子が3年の時、進路の問題で親子が呼ばれ、担任の先生と進路の先生の4人で懇談したことがあります。ひとり10分間という短い時間ではありましたが、子どもは理想ばっかりで先生方も大変だなと感じました。
司会
 どちらかといえば、個人懇談は学校が主体的に行うもので、PTA活動とは若干性格が違います。しかし、父母の方々と学校とが意志の疎通をはかるという点ではねらいは同じだと思います。
 話は変わりますが地区別懇談会はいかがでしたか。

地区別懇談会
保護者
 地区別懇談会は来年もぜひ企画してほしいと思いますね。
保護者
 地区が多くて先生方が大変でしょうから、もう少しブロックを統合した方がよいと思います。
保護者
 でも、余り人数が多くなっても困りますが。それと、時期を早めてはどうでしょう。折角校長先生に来ていただきましたが、寒くて風邪をひきそうでしたね。
保護者
 来年度は思い切って1学期にもってきてはどうですか。
保護者
 6月の父母参観・学級懇談会には学校側から話をする形でしたから、地区懇談も同じだと思って出席したところ、学校と家庭との意見交換の場だということで、とっさに何を話していいかわかりませんでした。
保護者
 本来的にはブロック構成が出来て、ブロック主催で地区懇を開き、先生方に来ていただいていろいろ教えてもらうのだということであれば、今のような誤解もなくなると思います。
保護者
 ことしは学校ペースでしたが、これからはブロックのペースでやりますと父母の受け止め方も違ってくるでしょうね。
校長
 ブロックに分けたりする作業は学校でないと出来ないと思います。これが出来たあとはブロックごとの責任者をお決めいただいて、そこで企画してもらう方がよいと思います。
保護者
 今度新1年が入れば今の3倍の人数になりますから、隣近所の人が誘い合って出席するというケースも出てきますね。
 高校の場合は、やはり学級PTAの活動を軸に、プラス地域組織の活動というのがPTA活動を活発にすることになるのではないでしょうか。

父親の参加を図るには
司会
 PTAの会合にお父さん方の参加が少ないのですが、どうしたらよいでしょう。実現はしなかったのですが、一杯飲む会を開いたら集まるだろうと・・・(笑い)
保護者
 私は一度経験がありますが200円会費でジンギスカンパーティーを開いたら沢山集まりました。
保護者
 飲んだり食べたりすると、ふだんいえないようなことでもいえるようになりますし、大げさにならないようにしてそんな会合もあった方がよいと思います。
保護者
 飲んだときには、いい知恵も浮かびますしね。(笑い)

家庭から学校へ
司会
 まず、可能なところから始めるべきでしょうか。
 つぎに、家庭から学校に対して、また学校から家庭に対して、この機会にお話しておきたいことはありませんか。
保護者
 子どもからいわれましたがクラブ活動の時間が短すぎるので長くしてほしいというのです。何とかならないでしょうか。
校長
 帰宅時間が余りおそくならないように下校時間を厳守させています。夏と冬では差がありますが、夏ですと1時間半は活動ができます。短い時間を効果的に使う訓練も必要です。
保護者
 高校生はいろいろなスポーツやクラブ活動をやりたい時期ですから、できれば学校側として充分時間を与えるようご配慮いただきたいと思います。

学校から家庭へ
学年主任
 家庭では着るものについての注意はされているようですが、上靴が案外忘れられていて、中にはずい分不潔なものをはいている生徒がいます。時々は洗たくをするようにしてほしいと思います。
司会
 まだまだお話は尽きないと思いますが、時間の関係もありますので、きょうの座談会はこの辺で終了させていただきます。大変ありがとうございました。

【家庭教育シリーズ1】家庭の雰囲気が人を育てる
校長

 「子どもが口をきいてくれない」「何を考えているのかさっぱりわからない」「何かをいえばすぐ反抗する」というのが、新入生の父母の声である。どうしたらと途方にくれて、ハレモノにさわるようにしている、という声もきかれる。
 昔から、思春期にある若い人達の心境はそんなに変わっていない筈である。昔は心に思っても言葉や行動に出してはいけなかったから目立たなかっただけだろう。ご両親の往時を省みて、そうでなかったという人は何人もいないのではないだろうか。皆そんなことを経験しながら今日に至っている。
 当時の親はどうしたのだろう。封建的家父長制、長幼の序、親の権利で、鉄拳制裁だけで圧服されて私達は育ってきたのだろうか。厳格なしつけもあったが、やさしい思いやりやギセイ的母性愛も、こんこんと非をさとす説得も、自ら子どもの手本になろうとした積極的な姿勢も、そして氷のような対立をとかす家庭特有の温かい、和らいだ雰囲気があったのではなかろうか。思春期の煩悶は煩悶として、反抗も無鉄砲も、その中で人間誰しもがかかるハシカのように、時がたつと何時とはなくとげとげしさが消え、おとなになってきたのではなかったか。
 思春期の心理的特性は、教育ママばやりの昨今、今更くどくど説明するまでもなく、すでにご承知のことであろう。
 子どもはひとりで孤島に育ったのではない。おとなの中で育ってきた、ということは、おとなの言動を雰囲気をまねて、吸って今日の姿になっている。しかももっとも身近な家庭の年長者をモデルとして。
 何時の世も子どもが変わらないさがをもって生まれてきていて、今変わったとしたら、それは子どもがモデルとしているおとなが変わったということではないのだろうか。私たちは、みずから省みて子どもの手本としてかけるところがないか。
 温かい家庭の雰囲気からは温和な性格が、冷たい家庭の雰囲気からは冷酷な性格が、基本的なものとして育つといわれる。大事なことはこのことで、思春期の現象は温かく見守られればおのずからあるべきように育っていくものだ。また、思春期の諸現象を経ない人間は人間らしく育たない、ということも銘記しておかねばならない。


[北陵だより第4号 4ページ]

スクールライフ

春香山スキー場(当時)でのスキー授業

スキー授業
 北国に生活する者にとって雪の季節は避けることの不可能な自然現象である。従って昔から雪にちなんだ行事が各地方で催されている。特にスキーは独りでも楽しめる冬のスポーツとして年々普及し、体育授業の一環として取り入れている学校も多い。
 本校では1月31日(水)、2月6日(火)、2月14日(水)の3回に亘って全校あげてスキー授業を実施しました。中にはスキーを一度もはいたことがない生徒もいましたが、それぞれの技術の程度に合わせてグループをつくり、一流の指導者と本校教職員全員とで指導にあたりました。
 長いスキーを足につけ雪の上を歩き滑り降るには、はじめての人は困難さを感じながらも、転んでは起き、転んでは起きしながら回を重ねるごとに上達し、冬の自然の中に有意義な日々を見出しました。

入学式
 4月9日(月)、第2回入学式が午後1時半から、まだうら寒い体育館で来賓、父母、教職員の見守る中で、厳粛に行われました。
 校長先生から「憤せざれば啓せず」すなわち、自ら発奮することの大事なことが話されました。また、新入生360名を代表して、新入生が「先輩の方達と協力して他の学校に負けない良い校風と伝統とを作りあげるよう努力する」旨の誓いのことばが述べられ、2時35分式を閉じました。

対面式
 4月10日、設立まもない生徒会の主催によって対面式が行われました。
 体育館で2年生が整列して待機する中を、2年の女子生徒に誘導された新1年生は、胸を張っての堂々の入場に満場の拍手で迎えれられました。
 次いで、校長先生から2年生には、1年間の勉学と校風づくりによく努力したとの賛辞があり、また1年生には北陵高校生徒としての本分をわきまえ、よき伝統づくりに邁進するようにとのお話がありました。
 続いて、生徒会長から歓迎の辞があり、新入生代表の力強い挨拶が述べられ、最後に両君が2年、1年をそれぞれ代表して固い握手がかわされ、なごやかな雰囲気のうちに式を終わりました。
 式の進行に当たって2年生が細かい心づかいをみせていたのが印象的でした。

新任紹介
 (この項目は掲載いたしません。)

編集後記
 20人の新任の職員を迎え、360人の新1年をうけ入れて、学校は一段と活気がみなぎってきました。寺子屋ないし、山の分教場からまがりなりにも脱皮した感じがします。

 1、2年生合わせて540余名の各々が、個性のある社会の有為な形成者に育ってほしいものである。その中には母校に奉職する者も出るかもしれない。

 おそくなりましたが第4号をおとどけいたします。1年の総括のつもりで計画しておりましたが、いつの間にか2年目に亘っておりました。
 内容豊かな年輪を今年も重ねたいものです。