北陵だより第19号/昭和52年12月20日発行


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北陵祭〜明日をつかもう君の手で〜

第5回北陵祭開催
 快晴の中を仮装行列に参加する生徒達が思い思いの仮装で校舎の横の広いグランドに集合する。どの級の仮装も実に良く出来ていて、工夫や苦心のあとがうかがえた。見ているだけで、実に楽しかった。屯田通りを蜿蜒と2時間ねり歩く、楽しそうにのびのびとした生徒の顔、顔、顔。見学の父母達も「とても良く出来ていますね」とほめていた様です。
 又学校祭については、全校行事に消極的な態度の生徒が多い昨今であるが、今の受検地獄のあおりを受けて無気力、無関心、無責任、いわゆる三無主義時代と言われている中で、当校の学校祭は生き生きとした創造力のたくましさがあり、演劇などそれぞれの催し物に、演出効果をもり上げていた。他校など型にはまった、ありきたりの展示と、現金収入を目的とする模擬店が多く、これが高校生なのかと期待はずれることがしばしばあったのですが、北陵高校独自の特色があり、創造性豊かなひとつのものに真剣に取り組みでき上がった作品の中にその喜びが感じられ、若さが満ちあふれ躍動していた。
 北陵祭という全校あげての最大の行事に向かって先生始め生徒、父母、三者一体となって作り上げた学校祭は、北陵高校独特の校風や伝統がみなぎっていた。

北陵祭を顧みて
北陵祭実行委員長

 昨年より2週間程早くなった北陵祭、それだけに準備もたいへんだったことでしょう。
 幸い好天に恵まれた前夜祭の仮装行列では、各学級趣向を凝らし立派なものばかりでした。なかでも3年生の作品は、さすがに工夫されていて沿道で見ている方も感心しておりました。
 展示・ステージ発表でも、見る人達を笑わせたり、何かについて考えさせたりするものなどいろいろありましたが、テーマにマッチした発表がなかったのは残念に思いました。
 しかし、何はともあれ北陵生一人一人が短い準備期間で精一杯力を合わせて準備をし、発表したということはたいへん意義のあることだと思います。
 実行委員会についても反省すべき点がないわけではありません。むしろ、反省しなければならないことばかりです。が、実行委員は実行委員なりに一生懸命努力したということだけでも、認めていただきたいと思います。
 最後ですが、この仕事にたずさわれた諸先生、各委員、全校生徒の皆さんにお礼申し上げます。

ゆりの木
保護者

▼子供達に祖父から小包が届いた。礼状を書くようにいう私に子供は電話で済ますと言う。今の若い人達は、電話という便利な道具が普及した為に、手紙を書くという習慣をすっかりなくしてしまった。相手に自分の気持ちを伝える時も簡単に電話で済ませてしまう。
▼文章の上手下手に関係なく人は物を書くということで日常救われる事が多いのではないでしょうか。日記をつけるということも楽しいこと苦しいこと、日々の不平不満をしたためることで心が落ち着き、その日の出来事が解消されることもあります。又くり返し書くことにより、自分の本当の心が判って来ることもありますし、自分の成長を確かめる手段にもなります。
▼手紙は少しの間でも気持ちを集中させ、温かい思いやりの心をもって相手の気持ちを考えるゆとりの時間を作ることによって書けるのです。それが相手をなぐさめ、喜ばせ、又感謝されることにもなり、そのことが又後の日に自分の心を残しておいてくれるのだと思います。
▼私は青春の日のページに目をはしらせ乍ら、過去の思わぬ出来事が鮮やかによみがえって、若き日の数々の思い出をこの上なくいとしく思い懐かしみます。そしてこの時にこそ書くことの意義を認めます。
▼若い人達に書くことの楽しさ、喜び、青春の歴史を残すことの意義をわかって貰いたいと思います。


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公開講座開かれる

生徒指導講座より〜テーマ「家庭と学校のかかわり」〜
 最近のめまぐるしい社会情勢の中での子供の健全育成は非常に困難なことで、多くの悩みを親たちがかかえています。今回の講座を一部抜粋し記載しました。少しでも今後の指針になればと思います。

 日時 12月3日(土)
 場所 応接室
 出席された方 校長先生、教頭先生、他4名の先生、P側男性3名・女性18名(地域の人3名)

オリエンテーションより
1.デパートに出かけるつもりで……
 父母懇談会、学級懇談会、個人懇談会、入学式卒業式、家庭訪問、PTA総会、地区研修会、クラブ顧問との話し合い、公開講座、その他にお出かけ下さい。
2.本音を出して話し合いましょう……
(1)成績中心から人間の心の指導を
 ◎こんな子供を育てたいという心の設計図があるだろうか。
(2)処罰される側、処罰する側……
 ◎親は教師不在の処で、子供を考えていないだろうか。
(3)非行化におびえる親、教師も教育に対する理念をもとう。
(4)近視眼的見方から無限の可能性を持って。
 ◎じっとそれを見つめてやる目を持っているであろうか。
 (永い目、正しい目、厳しい目、暖かい目)

―親と子のかかわり―
 押しつけ的かかわり(圧力釜方式)
 評価的かかわり(相対的絶対的)
 賞罰的かかわり(物質的報酬)
 相談的かかわり(共感的)
 同乗的かかわり(見せかけ的)


―家庭生活―
1.対話……親から問題をもちかける、よき聞き役になる。
2.夫婦和会―お互いに尊敬しあい助け合う。
3.親の職業観、人生観―親の考え方、生き方がいつの間にか伝わるもの。
4.手造りの味……教育ママ、電気ママから……手造りを……
5.家庭の構造……アパート的生活学習と環境
6.手をはなしても目をはなさない……遠くから見守る。躾→火つけ、正しい目、永い目、暖かい目、厳しい目
7.学校家庭の連携……お互いに本音を出し合い、子供のために話し合っておくことが必要。“小さなつまづきは大きな怪我のもとになります”

《親の心得》
1.魂を目ざめさせよう!
2.努力させよう!
3.礼儀正しくさせよう!
4.落ち着こう!
5.公平であろう!
6.知的になろう!
7.理解し、やさしくしよう!
8.何時も本当の事を言おう!
9.和合して一心同体になろう!
10.模範を示そう!

 以上ひとつひとつ噛み砕いて詳しく説明して下さいました。愛情即ち行いである。躾も火つけではなく、正しい心の目を養い、親自ら姿勢を正し親は子の鏡であるから真の心をもって遠大な教育に向かって、親自身が今何を学び行わなければならないのか、又心の指導が子供の生涯に於いてどれほど重要な役割をはたすのかを考えさせられました。

公開講座開催について
 PTAの研修会としては、昨年まで地区別研修会を実施してきましたが、参加される父母の数が年々減少し、研修会のもち方について検討することになりました。たまたま昨年開校5周年記念の一環行事として実施しました公開講座が好評を得ましたので、それらを含めて研修委員会で検討しました結果、先にご案内のような内容で実施することになりました。
 講座を開設するに当たり、左記の3つの目標をかかげ、学校、家庭、地域が一体となって生徒の健全な発展をさらに推し進めていくつもりです。
1.学校・家庭・地域との連携を密にする。
2.PTA・地域住民の研修の場とする。
3.教師の地域社会に対する奉仕活動の場とする。
 本年は昨年より更に3講座増して8講座としましたが、すでに一部の講座をのこし、他は定員となる申込みで関係者を喜ばせております。このような研修形態が北陵の伝統として今後ますます発展継続してほしいものです。

講座 内容
社会講座 明治維新
地理巡検
芸術講座 書道入門〜楷書の初歩
合唱
工芸講座 皮革染め
理科講座 ライフサイエンス
生徒指導講座 学校と家庭とのかかわり
進路指導講座 高校生の進路について

座談会
 学校と家庭のかかわりについてのディスカッションの中から親の悩み、今現実に困っていることを話し合って共通の理解を深められたらと思います。
(教員)杓子定規にならないで思いつきで結構ですから、親として教師としてどうすれば落ちこぼれないで済むのかという話をしてゆきたいと思います。
(保護者)私の子供は予備校に通っていますが、今迄の私の教育方針が現実にマッチしていたのか、子供の理想と合致しているのか、とても不安です。親の勉強不足か、勉強過剰なのか、あまりにも子供を理解しようとして却って迷うのです。
(保護者)そうですね。母親と違って、父親は話し合う時には徹底していて、なにか母親の甘さや近視眼的な所が思い知らされます。行動は幼稚で理屈ばかり先行する子供に対し、時には手紙によって心を通わせることも効果的ですね。
(教員)我々は本当に勉強不足なのか、それとも知識がありすぎて却って害になっているのか。昔の親は小学校しか出ていなくても、十何人もの子供をきちんと育てている。素晴らしいことですね。
(保護者)私は躾の面では厳しく言ってきましたが、勉強しろと言ったことはないんです。今の若い大人は、組織の中にいながら、礼儀作法が身についていない。こんな中で厳に躾をされた人間は絶対に強いと思う。中、高、大の一貫した教育で躾と人間らしさを養うことを第一に考えて欲しい。
(教員)私達教師が親が、躾の面で勇気をもって当たらなければなりませんね。
(保護者)躾についても戦後の教育を受けた若い母親の意識の持ち方に不安を感じます。母親教育の場をもつことが必要なのではないか?
(保護者)娘には良い母親になって貰いたいと思うが、息子には良い父親にというより前に、良い社会人にということがあるので適性進路が問題になります。躾・交友・健康の一辺倒では勉強の方が駄目になる。進学を目前にして痛感しています。
(教員)当然、進路とか将来の適性とかが本来的なものだと思います。その実現の為に、躾の面をもかけて、学校と家庭とが一つの流れにきちんと入っているかが大切だと思います。
(保護者)僕は北陵生と話す機会が多いのですけど、彼等の悩みとして、両親と話し合って一方的に自分の考えが無視されること、その考えすら聞いて貰えないという事が多いようです。話し合うタイミングが常にないみたい。親の期待がとても負担になっているのではないかと思います。自主的に進路を決めさせる方が良いのではないか。
(保護者)話は変わりますが、友人関係と学級で性格がすごく変わるものなのです。家庭環境よりも交友関係の影響の方が強いと思います。1年ですっかり変身した感じ。学級の子供と教師との心の触れ合いが欠けていると級全体の調和がとれないということを強く感じます。
(保護者)いろいろな友人とつき合うことを認めた方が良いが、いわゆる悪友として誰々とつき合うなと、親としては言えない。社会に出てからも同様なのだから、本人自身そのことを知って、経験していく以外はないのではないか。
(教員)今まで話された事は、一人の問題ではなく、みんなの同じ悩みだと思うのです。私達教師も深く責任を感じつつ、さらに皆さんと一緒に考えていきたいと思います。次回又、是非ご出席ください。

進路決定の視点(5)―父母の質問の中から―
進路指導部長

 今回は懇談の際に、父母の方から出される質問の中から、3点を取り上げてみたいと思います。
(1)親の願いと子供の志望の調整は?
 今年本校で実施したアンケートによると、「進路についての親と子の意見」は、
 (ア)一致している 33.4%
 (イ)一致していない 6.3%
 (ウ)不明 5.2%
 (エ)相談中 52.8%
でした。
 「進路は子供の自由意志に任せている」という方がおります。
 大層物分かりのよい、自主性尊重型のように見えますが、指導放棄型の例がよくあります。子供は社会、人生について未知の部分が多いのですから、親は社会、人生の先輩として、むしろ積極的に体験や親としての希望を語っていただきたいと思います。
 もし、真剣に話し合った結果、一致点を見いだせない時は、子供の意見を尊重していただきたい。所詮、子供は子供の人生を歩まなければならないのですから。
(2)学習面で努力不足では?
 前記の調査によると、「努力不足」と考えておられる父母の方は42.4%でした。「家庭における1日の学習時間」は、3時間以上が1年15%、2年16%、3年34%ですから、父母の印象を完全に裏付けております。
 高校で進学を考えた場合、1、2年時じ3時間、3年で5時間が最低必要でしょう。
 この努力の伴わない進学希望は、はかない夢と同意語です。こと学習に関しては、変に妥協せず、厳しい態度で対処してほしいものです。
(3)浪人の是非は?
 1期生から3期生までの進学希望者の内、浪人する者は毎年約35%位出ております。この率は市内の公立高校の中では大変低いほうなのですが、それでも相当な数字です。
 1年後におよそ3分の2が合格し、2年浪人でほぼ片付きます。しかし、浪人しても第1志望を達成する例は少ないのです。
 今春の入試結果から、1浪を追跡調査してみましたが、模試の成績が現役時代に比べて、SSで15伸びて国立2期に合格した例もありますが、むしろ現役時代よりも低下する場合もあり、先ず一応の目途として考えられるのは、SSで5程度でしょう。
 在学中に最大限に努力してみることが必要であって、安易な考えで浪人っせることは禁物です。


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スクールライフ

全国弁論大会 努力賞受賞
3年生男子

 11月3日(木)文化の日
 鳥取での長い夜が明け、窓を開けると、前日から時折降っていた雨もすっかり止み、爽やかな日差しが差し込んできた。山の景色が美しく、潮の匂いが漂ってくる。
 今日、ここ人口12万の鳥取市で第24回文部大臣旗全国高等学校弁論大会が開かれる。まさに、最後の弁論、総決算だ!!
  43名の弁士達
  同じ高校生でありながら
   様々に異なる人生観、価値観
  7分に凝縮されていた。
  青春の息吹が放たれた時
  若人はその言葉で
   青春を包みこんでいく
  言葉の明暗は ただ
   躍動の前では無力であっても
  一瞬一瞬 閃光の中に
  歓喜と悲哀とが入り混じり合う
  一時 若い力が
   現実との隙間を流れる
  無言! その隙間が
   脳裏を駆け巡った後
  私の最後の弁論が終わっていた

 最後に、この2年間御指導下さった顧問の先生、温かく激励して下さった方々に深く感謝致します。

マラソン大会 優勝者
2年生男子

 去年同様に学年別で走ると思っていた僕は優勝をねらっていた。しかし、全校一斉という情報でぐらついた。でも、優勝したいという気持ちには変わりはなかった。スタートに立つ時、優勝をねらえる位置はと考え、少しでも有利な場所をと考えた。部活動で何度か走っていたので、走り通す自信はあった。タイムを少しでも縮めれば満足しよう。それが優勝につながれば幸いと思いながらスタートした。マイペースで走れと考えながら走った。なんとかペースを持続できた。優勝!!この上な高校時代の思い出と喜びを、深く心にかみしめている。

見学旅行 自主研修の1日〜山の辺の道を訪ねて/2年1組第8班〜

◎研修のねらい
 奈良の伝説をたどってゆこう。そして、素朴な奈良の昔をしのぼう。奈良の昔に、小狐が作ったという宝剣の話を本で見つけた私達は、その剣が納められている石上神社を訪ねることにした。この神社は、日本最古のもので、そこに現在もハイキングコースとして残っている山の辺の道が通っていることを知った。神話時代にまでさかのぼることができるこの道を、古代の人達はどんな思いを持って通ったのだろう。などと考えながら、13キロの道を長岳寺を終点として、歩いてゆこうということになった。また、石上神社では、小狐宝剣丸が誰によって何のために作られたのかをつきとめることにした。そして下調べをしてゆくうちに、この神社にはヤマトタケルノミコトが竜の首を討った時の剣や、石でも切ることができるという霊剣などさまざまな神剣があることを知った。最後には混乱して、何がなんだかわからなくなってしまったのである。
◎研修コース
 石上神社―永久寺跡―夜都岐神社―果樹園―夜部岐神社―根上りの松―長岳寺―崇神天皇陵
◎研修を終えて
 「石の上布留の神杉神さびし恋をも我はさらにするかも」と万葉集に歌われているとおり、聳え立った杉木立の中に、石上神社がある。霊神と呼ぶのにふさわしいその森に、ぽっかり穴があいたように山の辺の道がはじまっている。黄色く実ったみかん、かき、刈り入れの終わったおうど色の田んぼ。遠影の山は昔話でもおこりそうに紅葉をはじめ、日差しは初夏のようにあたたかくやわらかい。私達は、ゆずの香のする名物のソーメンにも感激して、再び、必ずここへこようと言い合った。夢を見ているような気持ちがして、この土地に住みたくなった。こここそが、人間の故里なのかもしれない。


編集後記
▼見馴れぬ新聞用語の“割り付け”囲み記事など素人なりに勉強しながら、編集技術よりも熱意で北陵だよりを作りました。
▼本号は公開講座が開催され、特にその一部を紹介しました。
▼北陵だよりをとおして公開講座が、家庭教育のなかで少しでも参考になったら幸いです。
▼会員の皆様の、きたんのないご意見をお待ちしております。