北陵だより第28号/昭和55年12月20日発行


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このごろ思い煩うこと
校長

 近年青少年の非行が低年齢化したという。その傾向は校内暴力にまで及び、今まで高校生が中心だったのが中学生に移ったという。最近それを裏書する事例が本州において相次いで起こっていることも見逃せない。おそらく、遠からず北海道にも起こるであろうし、潜在的には起こりつつあるのかもしれない。
 このような憂うべき事態に社会が必ずといっていいほど学校の指導のあり方に厳しい眼をむけてくる。例えば「本当に教師全員が十分な検討を加え、全員の意見をまとめて事にあたっていたかどうか、また担任とか生活指導の教師にまかせて、他の教師は知らん顔をしてはいなかったか、という点である。全教師の理解と献身的な協力がなければ、<教育>としての暴力阻止は不可能であろう。また『生徒一人ひとりの存在を大切にし、温かく理解してやる教師であってほしい。……教師は生徒の悩みや不安を的確にとらえ、尊敬される教師として生徒に向かいあってもらいたい。教室の中だけでの努力に止まらず、問題のある生徒については父母との連携を密にし、問題行動の根がどこにあるのかをよく知り、学校と家庭と一体となって生徒の不満や悩みを解消するよう努めることだ。」といった具合である。
 確かに、これらの指摘は学校サイドで謙虚に受け止め、体制の強化、指導の徹底に最善の努力を傾けねばならないと思うが、反面、とかく他罰的な考え方を強く持ち自己中心的な不満を暴力に短絡させる傾向の生徒に「尊敬される教師」として向かい合うことの至難を痛感せずにはいられない。
 ひとり、校内暴力に止まらず、中高を通じて在学青少年の非行、事故の多発は憂慮にたえないところ、最近管内某高校における乗用車便乗による5人即死事故、日ならずして同類の車便乗による2人重傷事故(いずれも女子高校生)に暗然たる思いであった。
 今や学校をとりまく教育環境の変化は著しい。このような中で、多様なそして多情多感な生徒の一人ひとりに人間としてしっかり生きることの自覚―たしかな「こころ」を養うために一体これからどうしたらよいのであろうか。このごろしきりとわがことのように思い煩うのである。

ゆりの木
保護者

 思わず心をうばわれる様な人に出逢う事がある。にじみ出る美しさと言うのでしょうか、ただ着ている物のセンスが良いとかお化粧の仕方がうまいというのではなく、その人の人間性、つまり優しさ、思いやり、育ちの良さ、品の良さなど、それらをちょっとした仕種や言葉遣いなどで相手から感じた時である。これこそ、にじみ出る美しさというのでしょうか。最近では夫婦の間でも友達同士のような会話をする人が目立つ、だからといって意識して丁寧な言葉を使えば良いものでもない。例えば主人に対しても尊敬といたわりの気持ちがあれば無意識のうちに女らしい心ある話し方がおのずと出来るし、声にも話し方にも真の心優しさ、可愛らしさも表わせるのではないでしょうか。いらいらしたり慌てていたりしている時は言葉もきつく声も甲高く、周りが目に入らず他人の言葉も受け入れる余裕さえなくなるものですから「心のゆとり」を持つことが何より大切だと思います。心にゆとりがあれば自然にしているので言いたいことも言えるし、相手の事も良く考えられるので、その結果心ある言葉も行動も生まれてくるはずです。品も良く、センスも良く、会話にもインテリジェンスが感じられる素敵な奥様がいて密かに憧れていた。私はその家を訪れて驚いた。足の踏み場もない。突然の訪問ならいざ知らず、この方はどういう神経の持ち主かと不思議で仕方がなかった。本物の美しさ、さりげないオシャレと心を配り、片寄らないで心を磨き、自身をより美しくする努力「心のオシャレ」に心を向けてみたいと思うのです。


[北陵だより第28号 2ページ]



公開講座開かれる
生物巡検
一般市民

 小雨まじりの中を、私達一行は3名の先生の御指導のもとに、野幌森林公園へと向かった。途中、車窓から見える国道ぶちに、黄色い花をつけた「セイタカアワダチソウ(菊科)」の勢いのよい姿が随所に見られる。
 もともとはアメリカ産で空港あたりから飛び火して来たと思われる帰化植物とのお話ですが、今では仙台附近でも見かけられる由、まわりの植物を駆逐してはびこるけれど、やがては自分が自分を傷つけて滅びていく運命との事ですが、驚異でした。
 パリのフォンデブローの森や、ウイーンの森よりも樹種も多くすぐれているといわれる森林公園や、旭山記念公園、北大植物園を見学した有意義な一日でした。

社会科
一般市民

 社会科の講座は、ソ連という国を日本との関連において多方面から立体的に組立て理解しようという試みでした。明日にでもソ連軍が北海道に上陸するかのような防衛論争が紙上を賑わしている昨今、タイムリーな企画であったように思います。歴史・地理・思想・政治など各分野からの講師の先生方のお話は各々、興味深いものでした。その中で考えさせられたのは、“国有の領土”という考えはおそらく日本独自のものであり、ソ連が抱えている無数の国境問題の爆発を防ぐためにも北方領土の返還は簡単には行われないだろう、という指摘であり、又日本の軍備増強は“おびえた熊”であるソ連を刺激し戦争の危険を増大する、という指摘でした。ともすると狭い日本的発想から世界を判断する自分を反省させられた3日間でした。

皮革染
本校保護者

 今回初めて北陵高校でこのようなすばらしい講座を開設している事を知り、少しでも多くの知識を吸収し、現代社会の遅れを取り戻そうと思い参加致しました。このような機会がなかなかもてなかったのですが、田村先生はじめ諸先生方の御指導のもとに見るもの聞くものすべてが初めてで、先生もさぞ心もとなかったと思います。へたはへたなりにおほめの言葉を頂き、すっかり気をよくし、苦労しながらも、どこにもないものを自分自身で作り上げた時の喜び、ひとしおのものです。もう一度からなず朝鮮してみたいと思っております。この他、地理巡検、社会科、体育と時間の許す限りの講座に参加させて頂き、すべてがすばらしく充実したものばかりでした。来年も楽しみにしております。

10周年記念を明年に控えて
 明年は本校の開校10周年にあたります。
 応分の記念事業を行うことと、そのための準備を今年度から行うことが、5月24日のP・後合同定期総会で議決されておりました。その後、P・後合同運営委員会、同窓会、陵友会等と話し合いを進め、かなり事業内容が煮詰まってきております。
 記念事業としては、かねてからの懸案でありました中庭の環境整備を眼目に据え、仕上がりの関係上、今年度から着工することが決まり、芝はり、池、樹木の植え込みなど既に完了しております。
 その他、記念誌、10年の歩みのVTR、同窓会名簿の作成、記念式典、祝賀会の挙行等、隆盛を迎えた北陵高校の10年の節目を祝うにふさわしい事業、行事を計画しておりますので、今後の御協力をよろしくお願いいたします。

話のひろば
歳月の流れ

保護者

 去る11月8日、陵友会総会の中で、来年10月に創立10周年の記念式典が行われる事を知らされた。
 10年ひと昔の言葉があるが、私の脳裏に過ぎし日の歳月が、走馬灯のように駆けめぐる。
 2期生の娘は今年OL3年生。48年4月、中央区南1条東6丁目、豊平川の河畔に木造2階建ての古いが由緒ある旧一条中学校の仮校舎での式典、感動と寒さに震える入学式であった。
 ファイト漲る諸先生、不自由の中で校風を造るのだと張り切る生徒達。新校舎の完成を1日も早くと、学校側と父母が教育庁への日参。三者一体のスタートであった。
 娘は、部活動でテニス部を選んだが、新設校では各部の土台もなく、指導される先生、生徒達には苦労も多かった事だろう。
 朝は6時の一番バスに飛び乗って朝練、放課後の練習で暗くなって帰宅し、食事、お風呂、そしてダウン。このような生活が続く中で、進学を希望する娘に、これで良いのか、との不安にかられる。
 『部活動をしているからといって、テストの成績が悪いのは、理由にならない』と、娘のひとことで全面的に協力をした。
 高校生活で机にかじりつき、猛勉強をしている姿を見たのは、3年の夏休みが終わってからだった。当時の本間校長先生に『お宅の娘さんのように、高校生活を優雅に過ごした生徒は珍しい」のお言葉は忘れられない。
 短大は英文科。テニス部のキャプテン。遊ぶ時間もなくテニスに明け暮れる娘に『お前は英文科か、それともテニス科か』と父親の冗談も飛ぶ。
 念願だった航空会社への就職。中・高・短大を通して、テニスで鍛えた体と根性が入社試験には有利だったのかもしれない。
 クラブで御指導をいただいた先生、そして共に苦楽を味わった多くの仲間達との友情を何時までも大切に育てていって欲しいと思う。
 いま娘は、旅行が恋人とばかりに休暇を利用して、各地を飛び回り、青春を謳歌している。
 想い出多い入学式から、9年の歳月が流れた。
 現在の北陵高校は、環境の良い土地に、設備の整った3階建ての立派な校舎、正面玄関には校風を表わすかのようにイチイの大樹がそびえている。紙面で北陵の名を目にした時、一つずつ伝統を築いていく生徒達に拍手を送りたい。
 これからも、北陵高校の発展を祈り乍ら、陵友会を通して、見守っていきたいと思っている。


[北陵だより第28号 3ページ]

日本での印象
留学生

 日本人は民族的にも個人的にも暖かい心を感じさせ、思いやりがあり親切である。私は家にいるような打ち解けた気持ちで生活している。
 男女とも人間性が豊かですぐれているが、女性につつましさを要求しすぎてはいないか。女性自身の意識も問題であるが、女性の知的分野での活躍が少ないようだ。アメリカでもその傾向はあるが、日本はより顕著な気がする。しかし目上、老人に対する尊敬の念を大切にしていることは素晴らしいことで、これは日本文化構造につながっていると思う。
 北陵生は、勉強と部活動やLHR活動を調和させ、生活をエンジョイしているようで雰囲気もよい。アメリカと似ていると思う。勉強一辺倒で留学生なんか相手にしてくれない他校生もあるが、北陵生は皆私を大事にしてくれる。
 見学旅行での奈良・京都はよかった。新旧調和した日本的な静けさと平和を感じ取ることができた。
 今年8月20日、日本着。日が浅いので多くを語れないが、日本人について、日本の文化についてもっともっと知りたいと思う。

「身の回りは自分達の手で」
健康指導部長

 健康指導部紹介の第2回目は環境美化についてです。環境となっていますが、校舎外の植樹やグランド、中庭等の芝生を中心に学校の全体的環境についてのプランニングは此の分業の範囲ではありません。つまり、与えられた環境施設を単に美化する事であり、簡単にいうと清掃係ということになりましょう。したがって、誰もがやりたくないような分業であり、毎日が多くの人々に指摘される割の悪い仕事の一つであります。その割の悪い仕事を実際にやらなければならないのが、学級から選出された男女各1名からなる厚生委員ということになります。この委員は生徒会の中にある厚生委員会です。この組織は、生徒会の総務委員会へ委員長1名、副委員長2名、書記1名を出す一方で、環境美化について健康指導部に協力することになっております。厚生委員会は先に述べた役員の他に環境保健安全の3つのパートの班長を加えて7名で厚生総務を構成しており、厚生委員を指揮指導しており、健康指導部にとっては頼りがいのある戦友のような存在で年中休みなく奉仕活動を含む活躍をしております。
 仕事の内容を美化に限ってみますと次のような事をしております。
 生徒玄関の掃除、校舎外の紙屑篭の屑処理。掃除機、チョーククリーナの粉末、綿ゴミ処理、水飲み場の手洗い用石鹸の補充、各クラスの清掃用具の点検補充、大掃除、ワックス掛けの計画と実行、毎日の清掃点検等々、数え切る事が出来ない程の仕事があり、その他に保健や安全の分野の仕事があり、厚生総務の生徒には本当に感心させられます。それでも少し廊下がよごれている場合や窓の下に紙屑が落ちていると文句の一つも言うことになります。最近の生徒は家庭にあっても掃除等の作業をしないものと見えて、掃除もその他の作業も下手であり、自分で考え判断し工夫して作業をしません。そんな級友を指導する厚生委員の苦労はたいへんであります。私共でも文句を言いたくなるのですから、他はおして知るべしであります。厚生委員はHR役員中なりたくない役の横綱であるのも無理もないと思います。しかし学校生活の中で人の陰の力になって努力する事は決して人生の中で無駄にならない事でしょう。その意味で私共は厚生委員会の今後の地味な努力に期待します。生徒が自らの手で自分等の方法で自分なりの努力と研究を自分等の組織でやりとげる満足感を味わう事が出来れば、教育の効果があったと考えております。今後生徒の仕事がたとえ下手であっても、不手際であっても彼等の仕事に敬意をもって援助指導して行くことが健康指導部の仕事であると思っております。

文芸(俳句)
莞二
風紋のとろりと立てり夏の海
ピアニカの響く小春日参観日

多摩
合格の手に喝采の雪うける
山墓に音なき花火ひとつ消え

葉子
子ら帰り庭に花火の軸ひとつ
いのち惜し面影のこし薔薇崩る

延齢草
ふたりして目貼りする窓夕しぐれ
日盛りや船の行き交ふ岬まで

永子
鳳仙花種はじけとび夫昇進
霧晴れて一村にはかに現はれり

爽秋
三坪を耕す朝の遠郭公
球形の原野遙かにエゾリンドウ

満彩
咲き散るや色交々の秋の庭
紫陽花や父母眠りをる青嶺見ゆ

つるの
白き壁見舞ひて帰る秋桜
裁ちつづけ一枚残るカレンダー

明美
霜の夜や汽笛の余韻走りいづ
秋時雨大蝦夷の尾根穹に立つ


[北陵だより第28号 4ページ]



スクールライフ
全道読書感想文 最優秀賞受賞
3年生女子

 “戦争”あなたはどんな場面を思い浮かべるでしょうか。華々しく繰り広げられる銃撃戦、愛国心を胸に死んでゆく兵士達……。この「野火」は戦争のそんな一面ではなく、思わず戦慄を感じずにはいられないような裏の一面を描いた小説です。この小説を読み終えた私の心を占めたのは、感動ではなく、嫌悪という言葉でした。その嫌悪を綴った感想文に賞を頂けるなんて、全く信じられない気持でいっぱいです。尚今年は、有島武郎の作品「生まれいづる悩み」を題材とした2年の江守さんも最優秀賞を受賞しました。

高文連・高体連各大会入賞
バスケットボール部
3年生男子

 6月4日を以って、我々3年生は北陵バスケット部としての試合は終わった。入部した当時は無名に近いチームだったが、先生の指導のもと、辛いこと、苦しいことに耐え、来る日も来る日も練習に励んだ。途中でやめていった者もいた。が、お互いに励まし合い、最後には札幌地区ベスト4となり、全道まであと一歩と漕ぎ着けた。後輩達よ、このベスト4をステップとし、さらに上へとはばたいてほしい。今年は、部から国体選手も出て、部の飛躍の年であった。

国体に参加して
3年生男子

 我が札幌選抜は、8月に行われた国体全道予選に優勝し、バスケットを始めてからの目標であった全国大会、“国体”に出場することができた。試合は、初戦から今年「選抜」「インターハイ」そして「国体」と三冠王を狙う秋田の能代との対戦だった。全国の壁の厚さをまざまざと見せられ敗れたが、名門能代と試合をした事は、一生忘れることはないだろう。
 国体に出場して、北海道では見られないたくさんの優れたプレーを見、多くの事を学んだ。これからまた新たな目標に向かってがんばりたい。

陸上部
2年生男子

 9月15日に札幌市円山陸上競技場で新人戦が行われ、12名が出場し、男子棒高跳で松田が1位、南が5位、女子走幅跳で中島が6位に入り3名が入賞できたが、3名とも2年生で1年生の入賞がなかったことは大変残念だった。これからの冬期間をどのように練習したかによって来年のシーズンは決まってくるので、今年一年間を十分に反省し、その反省にもとづいて来年を目ざして、鍛練を積んでいきたいと思う。

演劇部
3年生女子

 10月9日〜13日の5日間に亘って行われた高文連で昨年に続き優良賞をいただく事ができました。これで北陵演劇部の土台ができたと思っています。3年作成によるおそまつな創作脚本をキャスト、スタッフの努力で舞台にあげることができた事、感謝しています。演劇は舞台に立てば、一人一人がセリフを発し演じなければなりません。しかしみんなの呼吸が1つにならなければ作品として完成しないという事を知らされた大会でもありました。今後、協力により自己の能力を大きく開花させ、本当の栄光をつかんで下さい。

美術部
3年生女子

 今年の高文連全道大会は、10月3日、4日の2日間にわたって室蘭で開かれました。今大会には北陵美術部からは2点が推薦されましたが、会場には各地区からの推薦とあって力作が並び、短時間で描き上げた自分の作品が恥ずかしく、あ〜もっと時間をかけてじっくり描くべきだったと後悔しました。私は高文連は今年で最後でしたが、1・2年は来年もまたあるので締切前の即席仕上げにならないよう、全道大会目指して、時間をかけて作品にとりくんでほしいと思います。

修学旅行を終えて
2年生女子



 修学旅行中写した写真にはみな青空と笑顔が見えています。私が一番印象に残った所は比叡山の延暦寺です。日本で一番大きな琵琶湖の美しさに見とれながら山を登っていきますと、ひんやりとしてきびしい空気の中に静かに力強く根本中堂は建っていました。活字でうめられた歴史の教科書ではわからない古都の寺の雰囲気を味わうことができました。
 全体を通して楽しかったとは思いますが、ただ時間におわれて十分に見学することができなかったように思います。質の充実をもう少し考えるべきだと思いました。

編集後記
▼馴れぬ者同志が集まってやっと28号が出来上がりましたので皆様にお届け致します。
▼高原校長先生には去る9月26日北海道教育功績者として表彰を受けられました。心から御祝い申し上げます。
▼編集にあたり御指導御協力頂きました諸先生方、お忙しい中原稿をお寄せ下さいまして皆様ありがとうございました。
▼会員の皆さまのきたんのない御意見をお待ちしております。