北陵だより第37号/昭和58年12月20日発行


[北陵だより第37号 1ページ]


「生命(いのち)の重みと人生を大切に」
PTA会長

 知識や技術の進歩とは別に精神面での立遅れが目立つ昨今です。校内暴力、若者の自殺、殺人、交通事故等大変気になる事ばかりです。自由だから何をやっても良いと言う思想が社会全体に充満している様な気がしてなりません。勿論政治や大人の責任をせめられるべきです。自由だから何をやっても良いという考えで行動する事は、ブレーキのきかない車に乗った様なもので、人をはね、樹木を倒し、自分も電柱に激突して命をたつことになるのです。私も皆さんと同じ様に青春を謳歌し、青少年期にありがちな悩みと迷いの中をくぐりぬけて来た一人ですが、現代程複雑な社会ではありませんでしたから暢気に過ごしたかも知れません。しかし、私は今皆さんと考えてみたいのです。少し難しいかも知れませんが、人間としてどう生きたら良いのかという道標を持つことが大事なのです。道標なしに生きる事は出来ません。皆さん達だって、混迷の社会を生きて行くのですから、しっかりと自分を見つめるべきです。しっかりしなくては道に迷ってしまうでしょう。人生というものには、帰りのない片道切符しか発行されていないのです。マラソンには折返点がありますが、人生には折返点はありません。マラソンにはゴールがあって観衆が拍手で迎えてくれますが人生にはゴールはないのです。従ってあれこれと考えて人生を走る自己のペース配分をしなければなりません。自分に強く、自分を大切に生きることなのです。自分を大切に、しっかり見つめる事が出来てこそ、相手を理解し、客観的に物を見る事が出来るのです。そしてほしくてたまらない欲望に負けない事なのです。私は毎日報道されるニュースの中で交通事故を起こし命をたつ若者の多いことに残念でなりません。車に対する考えもしっかり持つべきでしょう。微分積分を覚え、歴史を知り、友と語り読書スポーツに親しむこと、そして青春を謳歌すること等全て大切で必要な事に相違はありませんが、命あってのことではないでしょうか。私より数十年も永い人生を歩む皆さんが生命の尊さを更には重みを知り人生を勇敢に生きぬいてほしい。そして立派な社会的責任を果たす大人になってほしいと願うものです。

ゆりの木
 地下鉄に乗るといつもシルバーシートが気になって仕方がない。実際お年寄りの何割位の人達が喜んでいるのだろうか。席を譲られる煩わしさが無くていいという意見もあるだろうが、お年寄りや身体の不自由な人達に席を譲るという基本的な行為は、いつの時代になってもいろいろな場所で、ごく当たり前の様にあるべきだと思うし子供達にとってもそれを沢山見て育つ事は必要だと思う。同じシートに老人や若者、幼児が隣り合わせで座っている方が、老人が3人並んで(それも端の方に)座っている風景より遙かに人間的だ。
 人をある基準のもとに簡単に分けてしまうと、目に見えない所で大事な人間関係を失っていく様な気がしてならない。
 今子供達は成績順で実にはっきりと高校に振り分けられていく。彼等は黙って決められた通りに自分を似通ったレベルの集団に入っていく。個性を持つ学校(進学専門とか宗教とか体育系など)がいくつかあって、それを目ざすというのは必要だとしても、何も子供達全員を成績のみを基準にして一番下迄輪切りで振り分ける事はないと思う。集団の中にいろいろな子供達が居て、その中で種々雑多なふれあいが生まれ、それが良かれ悪しかれその子供のバネになって社会に出てからの生き方を大きく左右していく様な気がする。いくら愚痴を言っても子供達は乱暴な輪切り方式で押し流されていく。
 わが子の高校入試を思うと、理想と現実があまりにもかけ離れすぎていて気が遠くなってしまいそうである。
(保護者)


[北陵だより第37号 2ページ]

逞しく、優しく、美しく
1学年委員長

 春4月、北陵高校の門をくぐってから、早いもので2学期も終わろうとしています。宿泊研修、臨海学校、マラソン等の行事を通じて、仲間との親しみも増し、楽しい高校生活を送っていると感じています。学習に関しては、一生懸命に取り組んでいる生徒と、目標を達成して「ホッ」と一休みの生徒もいるように思いますが、どうでしょうか。又3年後には厳しい現実が待っているわけですから、毎日毎日を大切に目標に向かって前進してほしいものだと思います。今我が国は平和で、上等な品物が豊かにありますが、貴方達の親が育った時代は、経済的にも物質的にも恵まれず、進学の夢さえ持てない人々が大勢いたのです。しかし自分は勉強をさせてもらえないからとぐれたり、仕事が厳しいと愚痴を言っていては生きられない時代でした。そんな中でも皆んな一生懸命に青春を生きたのです。あんな暗い世の中が二度と来ない様に、多くの犠牲のうえに得た平和を大切にしているのです。分かっていただけますか。若さは感動する力でもあるわけですから、学習に、スポーツに、読書に、音楽に、芸術に、広く広く心を奪われてほしいものです。日々平凡に過ごしている私自身の反省も含めて心に浮かんだ事を書きましたが非行も又、大きな社会問題となっています。受験戦争、豊かさ故の物の与え過ぎ、親子の断絶、色々の原因が言われていますが、親も子も1日で変わってしまえるものではないのですから、悩み、苦しみがある時には、十分に話し合えるだけの余裕を持っていなければと思います。中学校での3年間は飛んでいる様な速さでした。高校の3年間は、もっと速いかもしれません。逞しく、優しく、美しく成長してこれることを祈り、きっとそうなることを信じております。

進学事情あれこれ(2)
就職を意識した進学

進路指導部長

 近年、受験する大学を選定する際に、大学を卒業するときの就職に関心をもつものが多くなってきております。
 自身の進路を考えるときに当然のことなのですが、「ランクが高いか、低いか」「いいところに就職できるか」といったことを大学での学習内容、自身の興味・適性よりも重視する傾向です。
 「いいところ」も仕事の内容ではなく、知名度が高く、待遇もよく、経営安定といった現時点でのいわゆる「花形産業」を夢見ているようです。
 今秋の大学卒の採用数でのランキングをみると11位までが電子、電機、情報機器メーカーで技術革新・新機器開発によって事業規模を拡大しているところです。
 過去を振り返ってみると昭和20年代の復興関連での石炭・鉄鋼・繊維、30年代の石油の台頭による重化学・自動車・造船・家電、40年代は高度成長期で住宅・商社・マスコミ、50年代は石油ショックを経験しての安定成長期となり造船・繊維・金属・重化学が構造不況におちいり、就職人気は公務員・教師・銀行・保険会社に移り、更にコンピューター業界が台頭してきているところです。
 今後はコンピューター関連・新素材開発・生命工学などの他に新エネルギー産業・システム産業・ファッション産業等が脚光を浴びることとなるでしょう。
 時代と共に急速に移り変わって来たのですが、これからは更に急速に変転するものと思われます。
 現在の花形産業も4年後は、更に終身雇用を考えての30年後は全く不明なものです。自身の興味関心の傾向・適性を考えずに「花形」を追い求めることが、大学に入ってからの学習不適応症のものを多く見ることとなり、花形会社に入社した数百人の大学卒の中で自身の位置を見い出すことができぬまま窓ぎわにすわるホワイトカラーをみることになるのです。
 本当に自分のやりたい勉強は何かを考えて大学を選び、充実した大学生活を送ることが、精通する一分野と共に幅広い人格形成をもたらし、希望の職業につくことのできる道につながるものと考えます。

話のひろば
私の生きがい

 私のボランティア活動の始まりは、昭和47年の春、故吉川静江氏のお手伝いからでした。氏は長年にわたり女性の手で老人福祉に携わり、現在まで続いている「婦人新報」の発刊、西区山の手に「敬老会館」の設立、北海道で一番先と云われる「寿楽荘老人クラブ」を発足させ今年は28周年を迎えました。私は2年間氏と同行し福祉に対する熱意と行動力に感激しこの精神のいくらかでも吸収できたらと夢中でした。そして私は主人の転勤で北広島に移り住む事になりました。同町は社会教育にとても熱心な所でしたので私もボランティアスクール、レクリーダー研修、日赤の家庭看護講習会等、出来る限り勉強させてもらい3年後に札幌に戻って参りました。そころがその半年前に吉川氏は他界されてしまったのです。私はとても残念でした。でも氏が最期まで私を待っていてくれた敬老会館においてボランティア活動をしたいと決心し現在に至っております。北広島から帰札の度に氏にお目にかかると老人クラブでも、道内にたくさん出来て踊りや唄もマンネリ化しているので、何か新しい風を吹き込みたいとよく云っておられました。その意にそえるかどうか不安でしたが私も勉強しながら何とかやってみようとレクダンスを取り入れる事にしました。フォークダンス・ジャズダンス・そして自由におどるレクダンス、レコードに合わせて手をつないで歩いたり、肩を組んだり、くぐったり、まわったり、唄いながら手拍子をしたり、と楽しくスタートいたしました。ペースも1ヵ月に1曲でもいいと始まったのが今ではレパートリーも45曲程になりました。衣装もスカートや蝶ネクタイなど揃えて、胸に花をつけ1年に4回新年会、誕生会、記念日、忘年会とステージに発表の場もあり、又他の行事からお呼びがあれば出かけて行って見てもらっております。昨年は地域対象にダンスのつどいを、今年は円山公園に遠足に行き野外でもおどってみました。最近はあちこちで色々なダンスも盛んになっておりますが、いち早く吉川氏の意にそって始めたこのようにダンスはもちろんゲーム等広くレクリエーションを老人クラブに取り入れた伝統を出来るだけ長く続けて行きたいと思い私も参考書を読んだり講習会に出かけたりと目下のところ生きがいになっているようです。息子達は、はじめボランティアと云うことが理解出来ないようでしたが、我家にも主人の両親が一緒に生活しておりますが、母がこの会に参加するようになってから私の努力を理解してくれ、家族の話題になるようになって参りました。私にとっては楽しみながら皆に喜ばれ、家族にも認められるようになった今日此の頃、微々たる事ですが一途にやり通して来てよかったと思いこれからもがんばって続けて行きたいと思っております。


[北陵だより第37号 3ページ]

楽しい公開講座

 昭和51年、開校5周年記念行事の一環として実施された公開講座が、多くの人々の希望により、PTA主催の研修講座として、今に継続していることは、注目に値しよう。本年度は、その8回目にあたる。
 年ごとに講座数も漸増し、今年度は、昨年に引き続き市民大学講座も加え、ますます充実発展している。
 「これからの北海道を考える」をテーマに、北海道の自然・産業の実地踏査をも含めた市民大学講座をはじめ、書道入門・班が入門・弓道・体育等々10講座に及んでいる。公開講座は、今後とも継続されるであろうが、PTA会員のご協力により、いよいよ実り多いものとなることであろう。

源氏を知る会
 皆様、土曜日の午後のひとときちょっと講座室をのぞいてご覧になりませんか。先生の講義に熱心に聴き入っているお母様達の生き生きとした姿が見られることと思います。
 「いづれの御時にか、女御更衣あまた侍い給ひける中に、」の書き出しであまりにも有名な源氏物語ではありますが、大作が故に古文はもちろん、現代語訳を含めても最期まで読破した方は意外に少ないのではないでしょうか。そういう私もその一人でして、いつかは読んでみたいとかねがね思っておりました。そんな時、公開講座のお誘いがあり「光源氏と知り合いになってみませんか?」のキャッチフレーズに心ひかれて出かけてみました。それにつけても講師の横野先生の見識の深さには驚くばかりです。
 紫式部が「源氏物語」を書くに至った背景、当時の風俗・習慣、貴族社会の構成などをふまえた上で読んで下さいますので、だいぶ頭の錆付いた私にも大変良く理解できます。今まで平安時代の貴族の恋愛小説と思っていましたが、実は紫式部の人生観、社会観もが語られていて、千年もたった現在なお私達に深い感銘を与える奥の深い物語である事も知りました。今は桐壷を終え帚木の巻に入った所です。光源氏を囲んでの女性談義は現代に通じる部分が沢山あり大変興味深く読みました。これから先の展開がとても楽しみです。

現代っ子の気質
 「現代っ子の気質」に参加させていただき学校と家庭のかかわりについて、川人先生、浜谷先生の御世話で塚田先生の司会のもとに11月5日、12日の2回の日程で開かれ、1回目は北陵高校の佐々木先生に、本校で57年11月末に実施されたアンケートによる資料「生徒意識調査悩みと相談相手」に基づき、又高2と小4のお母様で三角山小学校の丹由美子先生に小学生406名、高校生516名のアンケートによる「現代っ子の気質」の資料に基づきそれぞれ発表していただきました。2回目は校長先生、教頭先生も御参加になり、資料「学習習慣をつけさせるための指導をどうするか」「母と子の意見」に基づき、話し合いがなされました。無気力、無責任、無関心の三無主義といわれる現在の高校生。
・生徒の学習の実態の中で、親として耳の痛い、勉強したくて入学する子はわずか10数パーセント、家庭学習の習慣はついていない、高校に入ったのだから少しのんびりしようという気のゆるみ、怠けぐせが一度つくと立ち直りが困難等数々のデーター。
・生徒の特徴の中では、現実的、衝動的、甘え人間、持続力欠如等の傾向が見られるそうで、小さい内に学習、躾の習慣を身につける事が大切と結ばれました。

合唱

 エーデルワイス……エーデルワイス……
 昼下がりの音楽室から流れくる楽しい歌声…教室の中は1年振りの再会を懐かしむ顔々々々。“あの方見えてないけど、どうなさったかな、でも新しい方がこんなに沢山、良かったわー”と、心の中はワクワクと弾んでいる。
 秋風の爽やかな9月になると、中辻先生の美声に魅せられて、いそいそ北陵通いが始まります。
 先生の熱心なご指導通りにうまくならないのが悩みですが、歌う楽しさに溶けこみ、汗をかきながらハモルこのひと時は、心から幸せを感じる時です。
 幾つになってもオタマジャクシを追いかける心は若く、老いを知らない方達、来年もお元気で…

文芸(俳句)
多摩
 炎昼の大工口より釘を出す

爽秋
 大き虹背にして子らの登校す

莞二
 霜燃やす羅刹の貌のならびをり

満彩
 汗の頸見据えて噛じる反抗期

冬果
 螺旋階しづかに秋の美術館

則子
 夏雲にメモを残して夏終わる

きよ
 梵鐘に山は動かず今日の秋

秋城
 盂蘭盆会貝ひらくごと人赦す

嬉美
 夕焼の光をきざむ厨かな

つるの
 荒仕事トマトがぶりとしぶきけり

延齢草
 シュミーズの肩紐下がり大暑かな

翠春
 寺の庭梅干されいて廻りけり

信子
 すぐり菜をざるに満たして鰯雲

依子
 自閉症の街が私を沈めて秋

睦月
 酸漿を吊りしふたとせ部屋の壁

一翠
 火葬場の犬戯れゐたり草紅葉
(公開講座)


[北陵だより第37号 4ページ]

スクールライフ
高体連・高文連全道大会で活躍


書道部
3年生女子

 部活をやっていると、時々“書道部なんかあるの?”とか“書道教室に電気がついている!”といっているのを聞きます。しかし、地味ながら活動はやっているのです。今年は高文連書道展に4名入選し、10月には、全道大会の開催地である帯広まで行ってきました。
 少人数ですが、日本古来の芸術の追求と作品を創りあげた時の喜びを求めて頑張っています。

生物部
2年生男子

 我々生物部は、これまで「細胞性粘菌の分布と環境との関係」を中心テーマにして研究を続けてきました。11月、4・5日に函館西高で行われた、第22回高文連理科研究発表大会において、総合賞を戴くことができました。
 これは我々の研究テーマが独自のものであり、又部の全員が協力して、1つのテーマに何年間も取り組んでいるという点が高く評価されたものと思う。今後も今回の受賞を大きな励みとして全員で努力を続けていきたい。

演劇部
2年生女子

 今年の地区大会は、10月13日から17日の間に行われました。文化祭以後続いた中だるみで、参加できるかどうか不安でしたが、なんとか劇ができあがり、優良賞をとることができました。抽象劇ということで、かなり難しく、不満な点もありましたが、歌や踊りなど新しい事にとりくめ、よかったと思います。これからも、色々なものに挑戦し、楽しめる劇をつくっていってほしいと思います。

美術部
2年生男子

 美術部での活動の中心である、高文連、全道展、北陵祭を終えての今年の収穫は、新人部員が全部で11人(1年9人、2年3人)で総勢(1・2年)21人になり、全道高文連大会には、3年待水さんと2年三上君が出品したことだ。
 部活動は毎週火・木を定例として、1年生を中心としたヤングパワーで、ガンバッテいる。来年は学生全道展を中心にガンバリたい。

陸上部
2年生男子

 円山競技場で9月15日、札幌地区新人大会が行われた。我校は17名が出場し、自己新記録を目標にスタートラインに立った。結果は女子100mで1年生の佐川が13秒08で3位、男子走り高跳びで僕が1m89で3位、山口が1m80で6位であった。入賞できなかった者もなかなか高記録を出し、来年の全道、全国大会への期待が大きい。指導の先生に恵まれ、部員一同厳しい練習に励んでいる。

弓道部
2年生男子

 今年度は対外試合で振るわず団体地区大会個人5位、新人戦個人4位、札弓連50周年大会個人優勝、中央地区秋季大会個人5位の成績だった。気候不順の為射場が無く、練習不足の影響と思われる。又男子部員が少なく今一つ練習に励みが欠ける。弓道は短期間で安定した的中は得られない。
 地道な努力で来年の活躍をお約束します。

軟庭部
2年生女子

 今年の練習の成果を試す意味での新人戦。今までぎこちなかった応援も、選手のプレーも、一つずつ勝ち進んで行くうちに、一体となっていくのが分かりました。このことも力となって、3年生が勝ち取ってくれた団体3位という輝かしい成績を、守り抜くことができました。今の季節の地道な練習が、来春の充電期間となるように、頑張りたいと思います。

女人高野室生寺にて
2年生女子

 曇り空の中、2つの電車に乗り換えて、室生口大野駅で降りた後、バスに乗った。こんな所をバスが通れるのかと危ぶむほど細い道を山奥深く入り込んでいった。途中、色づいた柿の実、鮮やかな緑色の木々等の自然に陶酔しながら、15分ほどして室生寺前で降りた。
 そこから室生川のほとりに沿って歩き、室生川の渓流をまたぐ太鼓橋を渡り、表門を入る。素朴な土塀と周囲の巨大な杉木立。ひっそりと静まりかえって、どこからか鳥の声が聞こえそうな感じさえした。進んで行くと、よろい坂と呼ばれる石段があり、この寺の趣を象徴しているように感じられた。春たけなわになるとその周辺に石楠花が咲き乱れるという。更に石段を登ると急に「五重塔」が目に飛び込んできた。五重塔としては最も小さな塔だが、高い杉木立の中に隠れるように建っていた。細木を使った華奢な塔であり、その美しさに思わずため息が出る。水煙のない相輪もおもしろかった。
 急な石段が奥に続く。ここで修業した昔のお坊さんを思い、一段一段踏みしめて登った。周囲のシダの群落や石仏が目を楽しませてくれる。400段の石段を登りつめて、やっと奥の院についた。位牌堂の側のベンチに腰をおろすと、向こうに見える山の景色が、静寂の中でひときわきれいに見えた。

編集後記
▼又寒い冬がやって参りました。皆様には、お元気でお過ごしの事と存じます。
▼1年生は学校になれマイペースが出来た頃でしょうか?2年生は見学旅行も終わって何となくフワフワしているのでは?3年生は進学就職とそれぞれの進路に、親子共々悩める季節ですね。
▼今回は原稿の集まりも良く、寄稿されました方々に、委員一同、心より感謝致して居ります。
▼委員の山下邦子さんが朝日新聞の女性の小説に入選されました。喜びと共に心強くもあります。
▼皆様の北陵だよりです。御意見投稿をお待ちして居ります。