北陵だより第58号/平成2年12月20日発行


[北陵だより第58号 1ページ]


新たな伝説にブラスバンドを
3年生男子

 新しい試みが数多く行われた今年の北陵祭では、中でも鼓笛隊が特に際立つものであったと言えるでしょう。
 しかしその鼓笛隊も、当日の演奏に至るまでには多くの悪条件を克服しなければなりませんでした。
 まず団員の確保や楽器を揃えること、そして何よりも必要な練習時間です。何しろ隊の結成が決まったのが2週間前ですから、ほとんど無に等しい状態でした。しかし、生徒会長をはじめ鼓笛隊を成功させようという人達の尽力によってこれらの悪条件も克服され、1週間前に練習に入ることができました。こうして当日の演奏を無事終えることができたわけです。
 いま残念に思われるのは、こうした高い能力を持つ仲間が大勢いながら、本校にはその能力を発揮する場が設けられていないことです。そのため1回限りで解散になりました。開校20周年を迎えようとする今、本校に新たな伝統を創る意味からも何が必要かと問われたら、私は迷わずにブラスバンドと答えるでしょう。

宿泊研修で学んだこと
1年生男子

 僕は、この宿泊研修で集団行動の大切さと時間の重要さを学ぶことができた。
 集団行動ではいつも個人と全体とのかかわりをみるようにし、全体に迷惑をかけないよう自分で自覚し、責任をもって行動することを学んだ。また、決められた時間内で活動するための10分前行動、5分前完了の目標が、時間を大切にするきまりであることも知った。そして、友達と一緒に生活し、スポーツを楽しむことを通して、お互いを理解することもできた。
 三段山の登山では自分の体力の限界に挑んだけれど、次第に天候がくずれて雨が降り始め、途中下山となった時は残念だった。しかし、天空にかかった虹が疲れをいやしてくれるなど、雄大な自然に触れてその美しさを満喫できたのはよかった。
 この宿泊研修に参加して学んだことを、これからの学校生活に生かしていきたいと思う。

当麻寺を訪ねて
2年生女子

 近鉄当麻寺駅で下車して、寺まで続く約1キロばかりの坂道―ふと見上げると、水煙、相輪、やがて塔の半ばがうっすらと見えてきたころ、正面の東大門にさしかかった。古く、いかついその門は人を寄せつけがたく、また左右の仁王像を我々を睨んで立っていた。
 門をぬけてあたりを眺めた。伽藍全体がまわりの自然とみごとに調和して、えもいわれぬ美しい風景に呆然とした。日の光がまぶしく照らす中、私はしばらくそこに佇み、豊かな自然を満喫した。
 中の坊に入った。実雅法印の開基になる真言宗の寺院であり、豊成卿の息女、中将姫が剃髪したところだという。当時、当麻寺は女人禁制であったがため、厳しい修行を積んだと聞くが、その証ともいうべき彼女の足跡が念仏を唱えていた石にくっきりと窪んでみえている。―何故彼女は尼となったのか。彼女をそこまで追い詰めたものは一体何であったのか。そう問いかけながら、私はその足跡に触れた。ひんやりとした石の感触が彼女の悲しみを伝えてくるようだった。


[北陵だより第58号 2ページ]

伸びてゆく生徒への援助として
相談室から

教員

 教育相談室が今年再開されてから8ヶ月、特に数が多いということでもないが、何人もの生徒と接してきた。一般に生活指導が行う方法とは違って、相談室は「受容的」な姿勢を保ち、生徒が心を開いてあるがままの自分を見せてくれるよう場を保つ面がある。面接では生徒と同じ視点に立つことからはじめ、今を見つめさせ自分の明るい将来への足取りを取らせようとする。その話し合いに、多くの生徒がほっとしたような表情で自分を語ってくれるのが嬉しい。
 概して生徒は現在の自分をそのまま自分として肯定的に認識しているだけで、全体の中の自分や将来に結びつけた自分を見ることには不十分である場合が多い。この部屋で、自ら話しながら初めて自分を見たという感じで生徒が覚醒してゆく様子を見るのは、相談者として本当に嬉しい。生活面で若干気がかりなことのある生徒についても、ほとんどの生徒について、担任に「少し今までとは変わると思いますよ。期待して見てやりましょう」と伝えられるのは幸いだ。
 この部屋には、学習・生活・進路などの面で悩みを持ったり、また友人との軋轢で苦しんで、その解決への道を探ろうと、自分で訪れたり担任に勧められて来たりで、何人かの生徒の訪れがあるのだが、その中で、登校拒否的傾向の生徒にも何人か会った。一般にサボりといわれる「怠学」とは別で、学校へ日常のこととして通うことに「ためらい」や「すくみ」を感じて、学校への拒否を表す生徒の例である。これは今新しく起こった現象ではないのだが、近年、どの学校でもその数を多く数えるような状況で、本校でもごく少ないとはいえ、本人・親が深く悩んでいる事例がみられる。一旦この気持ちに襲われた生徒の不安な心理とその親の焦りや心配の気持ちに接して、相談者としてもいつも心を痛めている。
 この登校拒否事例ばなりでなくいずれの生徒指導にも、多くは親と教師の早い発見と対応が効果を持つことを認識して、特にこの教育相談室も、今後さらに家庭との連携を深くしてゆきたいと願っている。

話のひろば
趣味・生きがい・活力

保護者

 平均寿命が80才を越えました。今や定年後どうすごすかは30、40代から考えて準備することが必要だといわれています。「ぬれ落ち葉」とか「わし族」と言われないように何か趣味を持っていますか。働くこと以外に生きがいを持っていますか。
 私は複式学級のある田舎に育ったスポーツ音痴の娘でした。高卒以来28年、共働き22年の主婦でもあります。そんな人でもできるスポーツ、スキーについてお話します。
 どんなことでも良い指導者に恵まれることが重要だといわれます。私の出会った新体連スキー協の指導理念は「早く、楽しく、安全に」で、働く私にはピッタリです。
 スキーは回転することでスピードをコントロールし、安全かつスピーディーに滑り降りることが魅力のスポーツです。回転するためには、加重、エッジの切り換え、フォームが大事です。まずフォームとエッジを切り換えることを教えられました。この方法は若く、脚力があり、運動神経の良い方には向いてもオバさんスキーヤーには向きません。スキーが曲がらず斜面の右から左へ大陸横断したという経験はありませんか。スキー協の基本は、スキーは加重することにより曲がり、曲がることでスピードをコントロールすることにあります。加重とは体重を移動し加えること。人間の歩行は無意識のうちに体重を移動していますから、この理論は歩行の可能な人は誰でも曲がることができることになります。スキーを八の字に開き、体重を交互に加え回転をおこすプルークボーゲンは、スキーを特別の技術の人達のものから、誰でも楽しめるスポーツへと広げました。私もその恩恵を受け、数日で滑れるようになりました。次はだれでも一度はあこがれるパラレルターン。斜滑降から両足加重で小さなプルークを作り、エッジをフラットにし、片足に加重する。両足加重を点にし、回転の早い時期から片足加重する。この時ストックの助けを借ります。ストックを斜面前方につくことによって体をフォールライン(斜面下方)に向け、回転をリズミカルに行います。
 スキー事故で靭帯を損傷し、金具をつけて滑りますが、近郊は言うに及ばずニセコでも富良野でも楽しめるようになりました。
 私のスキーの楽しみはもう一つあります。スキー協には初、中、上級の指導員制度があり、私も初級指導員になりました。自分の経験を生かし、まったくの初心者にスキーを教えています。歩くことも難しかった子が2日目には手稲山頂からころびながらでも降りてくる。親に誇らしげに滑ってみせている場面は何度みても自分のことのように嬉しく楽しいものです。指導員の話をよく聞き、仲間の滑りから学び、自分ならどうするか考えてみるのが上達のコツ。前回教えた話を自分なりに理解して表現した4才の子にはびっくりしました。
 中年から始めたスキーが今や生きがいの一つになりました。働く活力にもなりました。さあ今年も「レッツ・スキー」


[北陵だより第58号 3ページ]

盛り上がったPTA教育懇談会
保護者

・今年で(3回目)になると云う、屯田地区懇談会が(9月12日)地区センターで行われました。開始が夜という事もあり、お勤めなさっている方や、お父さんの出席などもあって大勢の参加者で勧められました。丁度北陵祭も終わった時期でしたので、先生方から、準備の苦労話などもあり生徒達の熱い汗を感じました。質問の中には、生徒達の喫煙、登校拒否、進学問題などなど、どれも1年生を持つ親として興味深いお話ばかりでした。
 とにかく地域の中の学校という事で親も子も安心とリラックスで生活の乱れも見過ごしがちですが、今一度見直さなければいけないなあと反省させられました。日頃学校生活があまり良くわからない親にとっては、地区懇談会の意義は、大きいものと思われます。またこの様な機会がありましたら沢山の出席を願うと共に、先生方をはじめとして先輩の御両親のお話も是非お聞きしたいものと思っております。

・石狩地区懇談会は、9月21日花川コミュニティセンターで参加50名を越える父母と多数の先生方に出席して頂き、開催されました。内容は生活面、進路面について、資料を参考にして話し合いがもたれました。
 今、親は子供達の欠落している状況をしっかりと受け止め、十分な話し合いが必要ではないか、学校も子供達のために一丸となって頑張って行きたいという心強い発言がありました。さらに懇談を深めるために、2グループに分かれ、進路の第一歩の理系・文系の選択について、学習に対する姿勢、服装について、親と子供の考えの相違など、終了時間が近づく頃に話し合いが盛り上がりました。最後に教頭はじめて諸先生、お忙しい中本当にありがとうございました。

なにごとにもおっくうにならずに
卒業生

 私は、北陵高校の9期生で、現在、札幌市内の中学校に養護教諭として勤務しています。就職して4年目ですが、教師としてはまだまだ未熟者で、あわただしい日々を送っています。
 子どもたちや先生方など学校で生活する人たちの健康にたずさわる仕事であり、女性の職業としての魅力を感じ、この職に就いた私です。が、教育現場の厳しさ、教師の多忙さを知るまでは(教育実習くらいまででしょうか)、「保健の先生って静かで快適な場所で仕事ができていいなぁ。ひとりでのんびりできるし……。」というイメージがありました。養護教諭となって、養護教諭としての職の“重み”を実感しています。
 救急処置はもちろんのこと、子どもの体やこころの悩みを聞いたり、自分の親の年代の先生の体調の相談を受けたりなど、様々な場面で、多くの人間とかかわらなければならず、大学を出てもなお勉強することがたくさんあります。経験は浅くても“先生”である以上、専門職ですから、「わかりません」「知りません」ではすまされない厳しさがあるのです。
 最近の若者にイヤがられる仕事として3K(暗い、汚い、きつい)が挙げられていますが、3Kに当てはまらない仕事などないように感じます。めんどうくさい、とイヤがっても何もしないのでは進歩も何もありません。北陵生のみなさん、失敗の許される(?)若いうちに、何事にもおっくがらず、アソビにも勉強にも取り組んでほしいと思います。

公開講座
石狩巡検に参加して

保護者

 初めて公開講座の石狩巡検に親子で参加して、自分達の住んでいる石狩平野の成り立ちに触れ、途方もない雄大なドラマに驚かされ、実際に地図の上だけでなくその足跡をバスで辿り、常磐の石切り場、火山灰の流れ着いた所、土地の隆起、貝塚などに出会い、広島町での化石採集などを体験できました。
 あいにくの雨降りに泣かされ全行程を途中で断念しながらの見学でしたが、広島町での貝の化石採集では、何万年前のどの様な貝が出て来るのか、果たして見つかるのかという不安と期待の中で、泥だらけになりながらも、ついに発見することができました。土の中からそっと掘り出してみると、完全な形の物、不完全な物などいろいろあり、濡れた事も汚れた事も忘れた程でした。バスの中の先生の説明で、エゾシラオガイ、エゾキンチャクガイ、エゾワスレガイ、ユキノカサ(これは小さいせいか完全な物が多かったと思います)などはもう絶滅している貝の名前だと知りました。息子は最後の最後まで粘って野球ボールくらいの“ツメタ貝”を掘り当て、うれしそうに帰路につきました。他の貝と共にさっそく水洗いをして全貌が明らかになるにつれ、何万年も前に生息していた貝だと思うと、感動にひたることができました。その後家族で化石採集に行って来ました。(その日も雨降りでした……。)
 この講座を計画、準備して下さった先生方、有意義な1日をありがとうございました。


[北陵だより第58号 4ページ]

ゆりの木
頼もしい「新人類」に

教職員

 自分では将棋をさしませんが、将棋の棋士たちに興味があります。大山、升田の時代は遥か昔のこととなり、中原、谷川は健在ですが、現在棋界最高のタイトルを持っているのは羽生善治20才です。羽生ばかりではありません。今や10代の有望若手棋士たちが多数ひしめいております。24時間将棋漬けの彼らの猛烈な勉強振りはよく知られています。その理由を羽生は次のように語っています。
 「情報化社会とかで、世相の変化は目まぐるしいものがあるが、今の将棋の変化と進歩はそれ以上に急ピッチとも言える。これからの10年はおそらく過去の何十年分にも当たる変容を遂げるのではないか。(中略)そうした将棋の進歩に取り残されないためにも油断は禁物。絶えず前向きな勉強が必要になる。その場合も(中略)毎日コツコツと勉強する方が、“新しい流れ”についてゆくためには向いていると思う。」
 新人類棋士、天才と呼ばれる羽生にしてなお、“新しい流れ”に遅れまいとして懸命の努力をしているのに驚かされます。
 事実、間もなく屋敷少年が中原を破り、史上最年少18才で棋聖のタイトルを奪取しました。羽生の杞憂が現実になったのかもしれません。
  さて、今年の冬8名の生徒がリンカン高校に短期留学することになりました。これを契機に本校の国際化はここ数年で加速度的に進むことになると思います。これはおそらく全国的な傾向でしょう。近い将来、国際的な「新人類」の思いがけない登場と活躍とが期待されます。こればかりは「旧人類」「化石人類」はせめて足を引っ張らぬ努力をしたい、そのためにも勉強をしなければと思っているところです。

高体連・国体に活躍
馬術
3年生女子

 6年間、毎日のように続けてきた努力が実ったのか、待望の国体へ出場ができました。しかし受験を控えて毎日が慌しく過ぎ、十分な練習をする暇もなく、不安を残したまま大会に臨むこととなりました。勝敗は1点差という悔しい結果でしたが、自分としては全力を出し切ったので満足のいくものとなりました。
 馬という生き物を扱う特殊スポーツの中で得たものは多く、今思うと辛かったことも楽しい思い出とかわり、本当に続けてきてよかったと思っています。

陸上
1年生男子

 今年は国体を目標にトレーニングをしてきました。春先から夏の終わりまでケガをしてくやしい思いをしたけれど、国体に間に合ってほっとしました。
 福岡市で行われた国体では、僕は少年B100メートルと成少年共通の400メートルリレーに出場しました。100の方は、調整不足や練習不足であまりよい結果が出ませんでしたが、リレーはたいへん気持ちよく走ることができました。
 8泊9日の長丁場の中で3本も100メートルを走ることができ、僕はとても満足しています。

水泳
1年生男子

 僕は今年の夏に、高体連の北海道予選を通過してインターハイに200メートルと400メートルの個人メドレーという種目で出場することができました。
 ところがいざレースに出てみると、全国のレベルは高く、決勝ラインにかすりもせずに予選落ちしてしまいました。でも一応、北海道予選のときよりもタイムを上げて、自己ベストを出すことができました。
 こうして1年目が終わり、来年にむけて練習に励んでいるところです。一緒に泳ぐ本校の仲間が欲しいです。

PTA研修報告
 10月5日、高P連石狩支部研修会がありました。恵庭リサーチ・ビジネス・パークと北海道ハイテクノロジー専門学校、キリンビール千歳工場塔等を見学した後、キリンガーデンハウスで情報交換及び教育懇談会が開かれ、充実した日を過ごしました。(参加者11名)

編集後記
▼「わし族」「ぬれ落ち葉族」などの耳新しい言葉をめぐって、ひとしきり賑やかな編集会議でした。
▼今年も残りわずかとなりました。みな様どうぞよいお年を……。