北陵だより第62号/平成4年3月10日発行


[北陵だより第62号 1ページ]


困難に立ち向かえる大人に
3学年PTA副委員長

 3年生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
 18期生として入学され、在学中に開校20周年を迎えられた皆さんにとっては、思い出深い学校生活だったのではないでしょうか。屯田という土地柄ゆえ、夏は風が強く、冬は雪の多さに加え、地吹雪(屯田ブリザードと有名なようですが)が舞い上がり、通学も大変だった事と思います。でも、その厳しさの中で、勉強や部活にはげみ、素晴らしい仲間と出会い、充実した日々を過ごされた事と思います。
 この先、社会に出られる人、進学を希望する人と、進む道はそれぞれに異なる事と思いますが、どの道に進まれても、楽ばかりという訳にはいかないと思います。特に今は、世界中がなにかと変わりつつあって、先が読めない不安な時でもある様に思います。こんな時こそ、自分をしっかりきたえ、どの様な困難にも立ち向かえる大人になっていかなくてはならないと思います。また、物の豊かさにくらべ、心が貧しいとも云われています。人を信じる心、思いやる心、尽くす心を忘れる事のない様に、温かい人であって下さい。
 何事も「初め苦あり、やがて楽しきかな」です。このことばを胸に刻んで、今の「苦」に尻込みせずに頑張って生きていくことを祈っています。

「∞」(無限大)の豆の木をまた一歩
3年生男子

 卒業です。北陵高校に入学してから3年が経ちました。その長くも短い年月の間に、当然の様に先輩が去り、後輩がやって来て、畑地に住宅が立ち並び、街灯がつき、新しい体育館まで建ちました。そして自分はといえば、この間、根気強く教えていただいた数多くの先生方のお陰で、やっとここまで来ることが出来たというわけです。
 ところが、自分は今まで一体何をしていたのだろう―ふと、そう考える時があります。普通なら、勉強や部活動、趣味といったところが答えでしょう。しかし、問題は、それに満足したか、ということです。今現在は満足しているつもりでも、後々思い出した時に虚しさを感じる事があれば、それは真に心から満足していなかったことになるのではないでしょうか。
 その原因を他人や社会の責任にすることは簡単です。が、それで解決しますか?他人や社会が悪いのなら、自分の方から自分のちからで変わってやろうとは思いませんか?無趣味、無気力、無関心―こんな無の世界は遠慮したいと思うのですが、如何でしょうか。
 最後に、この3年間、勉強をはじめ、様々な生活や行動の中でご迷惑をおかけし、お世話になってしまった諸先生方、また縁の下で支えて下さった家族の皆様に、心の底から感謝いたします。

新しい発見に感動した見学旅行
2年生女子

 高校生活最大の行事である見学旅行が終わってしまった。慌ただしい旅行だったが、振り返ると新たな発見に感動しどおしの5日間となった。
 札幌から京都まで乗り物詰の丸一日は、とても疲れた。しかし、初めての寝台は寝心地は悪かったものの、友達とパジャマで夜中まで話をして、見学旅行に来たという実感で一杯だった。
 自主研修は見学場所が少し多かったので、全部回れるか心配したが、バスの連絡が良く、予定外の嵐山まで行くことができて良かった。
 思わず十円玉と見比べた平等院、鳥居の数の多さに驚いた稲荷大社、庭がきれいだった銀閣、そして弟の合格祈願もできた北野天満宮など、数えあげればきりがないが、北海道とはずいぶん違う風土や文化や人情に触れることができ、楽しい思い出となった。


[北陵だより第62号 2ページ]


贈ることば
・「馬鹿たれ」という言葉を贈ります。時には、馬鹿であれ、自分や目先のことばかり考えるな、小利口になるな、というほどの意味です。大変むずかしいことかもしれませんが、それ故に大切なことではないでしょうか。私自身、座右の銘としているのですが……。(1組担任)
・慌しく時が過ぎてしまいました。全員が一堂に会することはもうないかもしれないけど、信頼を失することなく、心を語り合える友をいつまでも大切にしていって下さい。健康で豊かな人生を。限りない前途を祝しつつ……。卒業おめでとう。(2組担任)
・卒業すると運動をしなくなる人や、不規則な生活の中で不健康要因の増えてしまう人がいるようである。心身の発達は、まだ終わってはいない。健康な社会人になるには、高校時代をいかに運動したかではなく、これからいかにするかである。その為に、良い仲間づくりをしていってほしい。(3組担任)
・卒業おめでとう。一つの節目が終わりましたが、実を熟させるには、まだまだ先のことです。甘い実を実らせることができるように、自ら積極的に学び、より多くのことを吸収していって下さい。最後に、健康には気をつけて下さい。(4組担任)



・卒業おめでとう。3年間色々な事がありましたね。どのように、そしてどれだけ自分は成長したでしょうか。北陵で得た大切な事は何ですか。皆さんは私にとって初めての生徒でした。だから感慨もひとしおです。“勇気”という言葉が必要な時、逃げたりへこたれたりしないこと。この言葉を贈ります。(5組担任)
・卒業おめでとう。無事にこの日を迎えることができたことをうれしく思います。諸君の努力もありますが、まずは親に感謝して下さい。4月からそれぞれの『道』を歩み始める君達に次の言葉を贈りはなむけとします。「埋葬された皇帝よりも生きている乞食の方がよい」=ラ・フォンテーヌ=(6組担任)
・卒業おめでとう。3年間の高校生活は短かったですか、それとも長かったでしょうか。これからの60年、70年を生きていく君達にとって良い思い出となっているでしょうか。とにかくこれがスタートです。良い事ばかりが続かないし、悪い事ばかりも続かないと思います。頑張って下さい。(7組担任)
・一人一人がきらりと光る、すばらしいものを持っていました。もっと若いうちにみがきをかけ、深めていってほしいものです。高校生活は人生の基本、基礎を習得する場かもしれません。21世紀を生きるそれぞれの人生を、健康に留意し心豊かに切り拓いて下さい。男子クラス、これからも協力して下さい。(8組担任)
・空を飛ぶ鳥のように自由に生きる 明日の日を夢見て 希望の道を。と私たちの思いを籠めて歌いました。誰にも規制されない、とは、自分が責任を取るしかないこと。自分で責任を取れないことを諦める勇気を持つこと。諸嬢諸君、自由人たれ。(9組担任)
・卒業おめでとう。就職する者、進学する者、各自の進路のもと精一杯努力して下さい。就職する者は健康には特に留意しましょう。金を稼ぐということは大変なことです。進学する者はしっかり学んで下さい。どこで学んだかではなく、「何を学んできたか」が重視されます。頑張りましょう。(10組担任)
・「一日生涯」―この言葉は、今は故人となった藤山寛美がテレビの中で語っていたものである。謂う心は、一日一日を生涯最後の「一日」だと心得て、精一杯生きると云うことだ。流石、一芸に秀でた物の言だと思って感心させられた。「一日生涯」―これを贈る言葉にしよう。(11組担任)


[北陵だより第62号 3ページ]

話のひろば
同級生と友情

3学年保護者

 N君から電話があって、銘酒が手に入ったから、K君の家で酒宴をやるので来ないかと云う。両君は、札幌市立陵雲中学校の同級生である。
 そんな中学校どこにあったっけといぶかるかもしれないが、校舎は北大植物園の西隣りにあった。今は市立大通小学校となっている。
 奇しくも、私を含め3人は、北区新琴似の住人である。私は仕事をそこそこに急ぎ帰宅した。もちろんK宅での宴会に参加するためである。酒の肴を手に下げて、雪道を歩いて行った。雪がキュッキュッと鳴る。かなり気温が下がっているらしい。途中N君と出会った。彼の右脇には、一升瓶があった。『越乃寒梅』である。それからの酒宴は、この銘酒のおかげもあってか、語らいに花が咲いたことはいうまでもない。苦労話が話題の中心であった。そんなことが話のネタになるなんて、我ら3人組、年なんだなと思いしらされたひとときでもあった。
 今年は申年。4度目の年男の集まりでもあったのである。学生時代にはそう仲間意識を感じなくても、学生時代に仕込まれた友情の酵母は、心の中で熟成し、いつしか銘酒となってあじわい深いものになる。まさに『越乃寒梅』で一杯やらないかと誘ってくれた同級生N君と会場を提供してくれたK君の気持ちが、何にもまして心を酔わす銘酒になったのである。
 中学校を卒業して、33年の歳月がながれていたのであった。それは友情が時間の中で醗酵し醸成されてゆくものであることを実感する機会でもあった。

おじゃま虫 雪中体育大会を見る
 雪中体育大会が開かれると聞いた“おじゃま虫”、鼻をうごかしてさっそく出かけた。
 まずは全校生徒に提供するおしる粉、ぶた汁づくりの調理室へ。大きな鍋から立ち昇る湯気、忙しく立ち働く家庭クラブ員。昨夜は8時半までかかったとか。イヤーごくろうさん。
 ついで競技場の校庭に。声援がわき起こる。“ちょいとごめんなさいよ”長い足、足、足をくぐり抜けて前進。“あれ!おじゃま虫の大敵、トサカを立てた…?”“にわとりじゃないよ、生徒会長さ。心配ないよ”側の生徒が教えてくれた。今日をより楽しくするための演出なのか。
 ボブスレーに出場の担任の先生、勢いあまって雪山に突っ込んだり、ひっくり返ったり。そのたびに大きな歓声が上がる。最後は棒倒し。果敢に突進するファイターたち。ガンバレ!
 楽しかったなぁ。おじゃま虫も仲間に入れてくれたみんな、ありがとう。
  

後輩達へ
8期生

 幼稚園勤務を経て、現在、児童会館に勤務している。北陵で指導をいただいたのはつい昨日のようにも思えるのに、今では子どもたちの社会教育にたずさわる立場にある。
 縁があるのか、屯田地区に着任して1年余になる。ごくまれに高校生も来館することがあり、その中に北陵の制服を見るのは、心躍る瞬間である。
 女子グループが図書室へやって来ることもあれば、留学生を伴って、ホームステイ宅の生徒が訪れたこともある。私も北陵卒だと告げると、真っすぐな、親愛の眼差しを向けてくれるのである。同窓生にも、仕事の場や街の中で思いがけなくお目にかかることがある。
 卒業後も、それぞれに活躍していることを我が事のように誇りに思う。多感な時期に同じ土壌で共に育ったという一種の連帯感は、例えようのない心の財産なのだ。
 思い返せば、高校時代は、自分探しの時期だったようである。あらゆる英知を与えられ、あらゆる希望を胸に抱いたものだ。
 卒業までにある程度の進路を決めるというのは、大変な作業だと思う。社会に出た今でも、自分のことを一番知らないのは自分だし、一生かけて、自分に密着してゆくのかもしれないと思う。
 北陵生諸君には、在学中に、地中の見えないところで、しっかりと自分の根を張って欲しいと思わずにはいられない。土壌に根づいていて欲しいと思う。


[北陵だより第62号 4ページ]

ゆりの木
ヨーロッパ雑感

事務長

 平成3年度文部省教育海外派遣北海道団の一員として、昨年10月18日から16日間の日程で、ドイツ・スイス・イタリア・フランスの4ヶ国の国内事情を視察する機会を得たので、私の印象に残ったことについて記してみたい。
 ヨーロッパの田園風景(ドイツ・スイス)は、北海道の景色とよく似ているが、農家の点在する日本と違い、教会を中心とする一つの集落を造っている。道端には電柱、宣伝看板はなく、こざっぱりの感じがした。高速道路は料金を取ることもなく、一般乗用のスピードは無制限である。日曜日のトラックの運転は禁止されている。運転免許証は更新なしの生涯有効、車は車検なしの動かなくなるまで乗り放題とか、凹凸だらけの車が歩道・車道かまわず無造作にびっしり停められていた(ローマ)。昼食は、食前酒(ビール・ワイン)を呑みながら3時間をかける。この間、レストラン以外はシャッターをおろして閉店。又、日曜・祝日の閉店は徹底している。食事後、ホテル・タクシー・トイレ(番人のいる所)はチップが必要なので、常時、小銭を持っていなければならない。死後30年で墓は撤去され、別の人に売却される(スイス)。
 ローマは、都市そのものが古代ローマの遺跡であり、当時の文化の高さにあらためて感銘をうけた。一方現在のローマは、落書きとゴミであふれいたるところにジプシーがおり、治安の悪さに驚いた。花の都・芸術の都パリは、歴史的建造物と美術作品のすばらしさに堪能させられた。洗練された美しい街、夜のシャンゼリゼ大通、セーヌ川をゆく船上でのライトアップのエッフェル塔、パリはフランスの街ではなく、世界の街パリだった。



高体・文連に活躍
放送局「Nコン] をめざして
2年生女子

 去る12月15日に行われた「高文連放送コンテスト」は、私達にとっては6月に行われる「NHK杯全国放送コンテスト」につながる準備の大会でした。アナウンス部門で初舞台の1年生は、緊張感でいっぱいでした。ラジオ部門では大会と定期考査の日程が近いことから締切りギリギリに追いつめられ、1年生の頑張りでやっと仕上げることができました。また、私のことではミス原稿を提出してしまい、出場不可能になりそうなハプニングもありましたが、多くの先生方のご協力があってどうにか朗読部門で入選することができました。
 これを契機に「Nコン」に向けて一生懸命頑張りたいと思います。

地学部 屯田の夜空を観る
2年生男子

 地学部では年に数回“夜間観測会”なるものを行っています。夜間観測会とは、学校に泊まりこんで、一晩中星を観測するのです。夏は暗くなるのが遅いので、普段はほとんど観測できません。それでみんなの期待はこの日に集まります。
 屋上に望遠鏡を運びこんだら、早速観測開始です。観測の対象はおもに惑星や星雲ですが、真夜中になると、夏なのに冬の星座等も観ることができます。そこがまたおもしろい所でもあるのです。はじめての人は、馴れない望遠鏡に不満の声を上げたり、星の美しさに感嘆の声をもらしたり、それぞれ屯田の夜空を楽しんでいるようです。そして、最後にみんなで日の出を見ると、夜間観測会はその幕を閉じるのです。

卒業記念品の紹介
 第18回卒業生一同より卒業記念品として『演台 一式』が学校に寄贈されました。

編集後記
▼新緑の頃から始まって、暑い日差しの中や紅葉の映える中、また寒風の中を学校に出向き、編集にかかわらせて頂いているうちに、早くも本年度最後の「北陵だより」となりました。学校がたいへん身近に感じられた1年でした。
▼例年どおり、卒業を祈念して、諸先生方から卒業生に贈る言葉を頂きました。卒業生の皆様にとって、新しい旅立ちへの言葉となれば、うれしく思います。
▼最後になりましたが、編集にあたってご協力頂きましたことを、委員一同、心からお礼申し上げます。