北陵だより第70号/平成6年12月26日発行


[北陵だより第70号 1ページ]

私の北陵祭の楽しみ方
3年生女子

 私は、生徒会役員だったので、北陵祭中は自分の仕事だけで精一杯でした。その仕事というのは食堂喫茶の総責任者です。
 準備期間中は、まず業者とのメニューの打ち合わせをしましたが、子供なんか相手にできないという対応の会社もあって、悪戦苦闘しました。それが終わると、約1,700人分の注文票の集計、そして食券作成、食券の袋詰め…。もちろん多くの人の協力があってこそできた仕事ですが、この期間中は、正直言って、どこか遠い国に逃げ去りたいくらい大変でした。
 当日は、商品の見張りなどのためにただひたすら、第一講義室にずーっといるという、さみしい2日間でした。
 色々とハプニングもありましたが、全体的には、ほぼ成功で満足しています。みなさんはどうでしたか?自分の納得のいく北陵祭でしたか?
 ただ一つの心残りは、ちょっと目を離したすきに誘拐されていったクレープアイスたちの消息です……。

坐禅と友禅染めに挑戦
2年生女子

 生まれて初めて京都・奈良を訪れた見学旅行は、何もかもがドキドキすることの連続だった。中でも思い出深いものは、体験学習である。挑戦したのは坐禅と友禅染めだ。
 坐禅はやったことがあるから大丈夫と思っていた。が、しかし、足はしびれ、その上睡魔も襲ってきた。結局、警策で叩かれはしなかったが叱られた。後で考えてみると、私達のためにしてくれたお坊さんに悪い気がした。そんな余韻を残して友禅染めをさせてくれる『久利匠』へ行った。ハンカチ染めをしたのだが、私の不安が的中した。絵が下手なことだ。すごいハンカチが2枚できた。1枚は祖母にあげ、もう1枚は私が持っていることにした。絵の下手さを実感させられたが、おもしろかった。できればもう一度挑戦してみたい。
 この旅行でよかったと思うのは、『新しい自分』というものが見つけられたことだった。短所ばかりではあるが、それを直すよう努力していきたいと思う。

楽しく登る
1年生女子

 なんといっても宿泊学習のメインはやっぱり登山だろう。しかし、日頃から計画性のない私は1日目の時点ですべての力を出しつくしてしまいヘロヘロになっていた。はっきりいって2日目の登山なんてどうでもよかった。登山中止のために雨ごいまでして翌日に備えた。
 しかし、そんな私をあざ笑うかのように富良野岳は快晴。予定どおり登山は決行された。初めは、文句ばかり言っていた私も“アルプスの少女ハイジ”のような絶景に誘われるかのように「登山ってやっぱいいよね」なんて調子のいいことまで言ってしまったものだ。そんな中でも、うるさい私といっしょに登ってくれた友達そして先生たち。特に、T先生とは登山の時初めて話したのに気軽に話してくれてうれしかった。ためになる話やくだらない話も登山を楽しくしてくれた。登山の一番の目標は「楽しく登る」だと思う。その点では、この登山は満点だろう。また今度みんなで楽しく登りたい。


[北陵だより第70号 2ページ]


国体を通じて
3年生女子

 私が国体のバスケットボール少年女子の札幌選抜の候補メンバーに入ったと聞いたのは、高体連で負けたばかりで、自分に対して自信をなくしていたときでした。なぜ私を選んだのか、私にできるのだろうかという、迷いと不安の気持ちでいっぱいでした。でも、あたって砕けろという思いで選考会に臨み、メンバーに入ることができました。メンバーに入ったからには一生懸命頑張って、少しでも上手になろうと思いました。
 10月27日に愛知県に向けて出発しました。30日は1回戦で石川県と対戦しました。残り時間が少なくなったところで逆転勝ちをしました。全国大会が初めての私にとって、他県の選手の伸長が大きいこと、顔つきの違い、スピード、プレイのうまさや会場の雰囲気など、そのスケールの大きさに驚きの連続でした。31日は2回戦で長崎県と対戦しました。かなり追い上げたのですが、結局負けてしまいました。いつもよりもシュートミスが目立つ試合で、悔しかったです。次に対戦したら、必ず勝つと、山の手高校の選手が言ってくれたので、心強く感じました。
 私は2試合とも出場することはできませんでしたが、多くのことを学びました。例えば、全国のレベルを体で感じることができたこと、気持ちの持ち方で上手になれること、一生懸命な姿には見ている者を感動させることができることなどです。このことを後輩たちに伝え、また、自分の進路にも生かしていきたいです。

平成少年使節に本校生も
 札幌ポートランド姉妹都市提携35周年を記念して、札幌市内高校生がポートランドへ派遣されることとなり、本校からは、2年生の佐々木君が選ばれた。冬休み中、1週間の派遣ではあるが、別掲の記事のようにリンカーン高校との交換留学が現在できないでいる中、佐々木君がポートランドと我が校との絆をつないできてくれることはまことに喜ばしい。向こうではホームステイしてポートランド市民の家庭生活を実体験するそうである。
 この1名の枠に10名を越える応募があった。本校生の積極性が頼もしい。
 同君も、今年夏、自費でオーストラリアに2週間ホームステイしてきたという、国際交流に積極的な若者であり、文化・思想などの彼我の相違を学んできたい、と抱負を語っている。

話のひろば
娘の挑戦

3年P

 暑かったこの夏、私達家族もまた、燃えるような熱い思いを味わった。娘が、高体連バレーボール大会に初出場できたのです。
 千歳市総合武道館での札幌地区大会に、夫と私は3日間通い続けた。そして最後の試合が終わる迄、娘がコートの中に無事いられるよう、ひたすら祈った。
 北陵に入学して10日目、右膝前十字靭帯を断裂。入院して二度の手術。2ヶ月の入院中、痛さと悔しさで幾晩も泣いた。病室の天井から下げたバレーボールを、動く方の足でよく蹴り上げていた。懸命のリハビリで、バレーボールがまたできるようになった翌3月、今度は反対の膝の靭帯を断裂。2年生のクラスの皆の顔を見る前に入院、手術。同じくり返しに、夫も私も励ましようがなかった。でも、病棟には「同じ脛に傷」を持つ仲間が沢山いた。その誰もが皆、明るかった。娘も次第に元気を取り戻し、再び好きなバレーボールに挑戦すると言った。そんな娘の願いを、部の先生方は受け入れて下さった。両先生にとって、どんなに辛く勇気のいる決断だった事か。バレー部の仲間も変わらぬ友情で迎えてくれた。
 地区大会第2試合、東海大四との戦い。息が詰まるような苦しい接戦の末、勝った!北陵が勝った!皆が泣いた。そしてこの時の粘りと感動が、全道大会ベスト8の成績に繋がった。
 部活動が終わり、両膝の固い装具が娘の膝から放れた。私の肩の荷も降りた。が、心に、感動の輪が幾重にも広がっていった。娘がコートの中で流した汗と涙が、きらきらと虹色に輝いていたのを、今もときどき思い出している。


[北陵だより第70号 3ページ]

私の“今”
15期生

 年齢を尋ねられて苦痛に思ったことは、まだ一度も、ない。しかし最近、外野がウルサイ。「そろそろ年ごろだしねぇ」「ずっと、仕事続けるの?」…気にしない、気にしない。そう思いつつ、仕事先で「まだ若いんでしょう?」と聞かれ「若いといっていい年なんでしょうか」などと心にもないことを言って、自己嫌悪におちいったりしている。何ともいやらしい。
 年をとるってどういうことだろう、と考える。時々、高校時代を思い返して、自分が16歳や17歳という時代を過ごしたことが、まるで幻のように思えたりすることがある。それは決して過去が感傷の材料ということではなく、私が私の“今”をとても大切に思っているからだ。
 書く、ということを仕事にして、2年半が過ぎた。短大を卒業して試行錯誤を繰り返し、たどり着いた一つの通過点。一体私は何をやっているんだろう、と自問自答することは少なくない。もうやめてやる!と、何度思ったかしれない。それでも、そんな思いをかき消すほどの大切な出会いがあり、貴重な経験ができたからこそやってこれた、と思う。
 今年の夏、初めて関わった高校野球の取材では、母校の試合をスタンドから見ることができた。選手のプレーはもちろん、全校応援の制服姿が何だかとてもまぶしくて、強い日射しの下で持ち慣れないスコアシートを手に、妙に感動したのを覚えている。この仕事をしていなければ出会ない感動だった。何も後悔していないといえば、ウソになる。背負うものもどんどん重くなっていく。でも、今までの楽しかったすべてを天秤にかけても、私は“今”がいとおしい。どんなに年を重ねても“今”を愛せる自分でいたい。23歳と8ヶ月の私は、そんなことを思っている。

シリーズ屯田の四季・歴史
北陵のシンボル

教職員


 イチイ―Taxus cuspidata―は、オンコとも呼ばれ、庭木、生垣として植栽している家が多い。
 樹冠がこんもりと茂って美しく、成長は遅いが、病害虫に冒されにくく雪の重さにもよく耐えるなど、管理が容易なこともイチイが好まれる所以であろう。
 北陵高校校地には、エゾマツ、トドマツ、イチイ、ブナ、ユリノキなど20種以上の樹木が植えられている。ストローブマツのように植樹したが、消えてしまった木もある。
 イチイも丈が低いものは、定着している。しかし、校舎正面のあのイチイは、移植後18年を経て上部が枯れかけてきており、心配である。
 この木は、開校5周年に際して、当別町青山の穏和な気候と肥沃な土壌に恵まれた森林から、苛酷な環境である校庭へ移植されたものである。
 根を切断され、地上部は酷暑と寒冷にさらされ、地下部は地表の舗装による水分不足等、樹勢の衰えは、起きるべくしておきたと思わざるを得ない。
 本校の先達の、さまざまな願いと期待が込められているこの木の現状を回復させるために、専門家―樹医―の診断を仰ぐことなどの対処が考えられてもよいのではないか、と思う。

北陵生 海を渡る―米国リッチランド高校へ
 北陵高校からアメリカはペンシルバニア州のリッチランド高校へ、12名の生徒が短期留学することが決定した。
 姉妹校リンカーン高校との交換留学が先方の事情でしばらくできなくなっているため、道教育委員会の国際交流課に相談したところ、国際教育交流馬場財団を紹介され、そこが斡旋してくれたのがリッチランド高校。
 リッチランドは風光明媚な森林山間地で、人口12,000人、白人主体で中流の家庭が多く、西部・東部ヨーロッパ出身の多くの民族グループが存在し、多彩な習慣や伝統を生んでいる町だそうである。ちなみに治安は良いとのこと。リッチランド高校では日本から生徒・引率教員を受け入れた経験がすでにあり、好印象を持っているという。ただし、北海道の学校は初めてであるとか。
 2年ぶりの短期留学生の募集に対して、生徒の反応は極めてよく、定員に対し、約3倍の応募を見た。嬉しい難題に悩みながら、担当教員一同が総合的な観点から選考に当たった結果、次の12名の中学が決定した。(以下、生徒氏名が掲載されていますが、個人情報保護のためここでは省略します)
 12名は3月8日、2名の先生に引率されて成田から夢とともに飛び立ち、4月2日に帰国の予定である。
 西海岸のリンカーン高校には何回か生徒が行っているが、アメリカ東部への派遣は初めて。土産話が楽しみなことである。


[北陵だより第70号 4ページ]

ゆりの木
ゆったり構える

教職員

 高校生のころはいろいろな本を読んだ。小説はもちろん、紀行、詩、マンガ、辞典……。あらゆるジャンルを読書の対象にしていた。気の向くままの読書、まさに濫読である。そういった読書を通して、雑多な知識が身につき、社会に対する考え方が固まっていったと思う。
 だが、知識を得る、国語の力をつけるなどの目的を持って読書を始めたのではない。知らず知らずのうちに、手が本へと伸びていたのである。
 この時期は気持ちが落ち着かず、いつもゆらゆら揺れている。学校や家庭、さらには自分に対して苛立ち、理由もなく当たり散らす。自分の考えが一番正しいと思いつつ、他人が気になり、自分がつまらない人間に思えることも多い。
 一人では抑えられない高ぶりを、勉強やスポーツに集中することで忘れようとする者もいる。いわゆる反社会的行動をとり、自分の存在を誇示する者もいる。口に出す者は少ないが、とにかくつらいのである。どうしてよいのかわからないのである。
 私の場合、この混沌に整理をつける方法として、無意識のうちに読書を選んでいたのだ。残念ながら当時は、より不安が増すばかりで苦しい時期はその後何年間も続いた。けれど、現在高校時代に読んだ本を開くと、かつての感情が蘇ってくる。苦笑いしながら、思い出に浸るのも悪くはない。悩めるうちに思いっきり悩むのがよい、と考える今日この頃である。

おじゃま虫 プチバザーに参加
 北陵祭プチバザーの準備におじゃましました。数回にわたり和紙・皮の小物・パン・クッキー・エプロンetc制作を、有志の会の皆様が一生懸命作業をしていた。朝からウロウロしていながら協力したのは、おしゃべりと試食のみであった。が、こんなに楽しくて良いのだろうか、と思いつつ、有意義な日々を過ごしたと、満足しきり。ステキな笑顔をありがとう。

おじゃま虫 マラソン給水体験
 先頭走者に給水を、と思いきや、コップを両手に持った踏切待ちの通行人になってしまった。それも新幹線の。水汲み係は、道路・靴・良くても足しか見れず。ゴミ係は、水をかぶり。ただ闇雲に「ガンバレー」を連呼するのみであった。

おじゃま虫が見た北陵生の実態
・給水おばさんの正面に立ち止まり、礼「いただきます」
 ゴクリ「ごちそうさま」礼。
・リタイアを頭に浮かべ給水ポイント。笑顔で「がんばってね」と水を渡され、結果完走。
・「ガンバレー」と大声で言ったら、振り向いて「ありがとうございます」と、15度の会釈。
・空きコップを道路に投げれずわざわざ端に寄り、行儀よくきちんと置いた。
・コップ片手にどっかり腰をおろし世間話。しばし寛いだ後「そろそろ行くか」
・「おかわりいいですか」「ごちそうさまでした」「おばさん 今日は」「行って来まーす」
 彼のクーベルタン男爵は、雲の上から北陵生を見て、さぞやご満足であったろう。
 ほんの少し垣間見ただけではあったが、それぞれの立場の人々から=爛柯=を感じた秋の日々であった。

編集後記
▼知的障害を持つ息子を尊敬している大江健三郎氏。基本であり、理想である。でも本当は、とても難しい。
▼不惜身命・不撓不屈もあれば優柔不断・他力本願もある。昨今の四文字熟語「○肉○食」は「焼肉定食」だそうな。
▼交換留学復活。“二十四の瞳”は何を見て帰るのだろうか。光?影?いずれにしても人生の肥やしとなれ。
▼全校応援の1学期。何かを予感させた2学期。燃えている北陵。いつか爆発だ。
▼カゼが流行してます。皆様、特に3年生の生徒諸君、御家族くれぐれも気を付けて下さいね。
▼今年ももう少しで終わりです。たくさんの方々にお世話になりました。本当に本当にありがとうございました。良いお年を。